鉄道趣味はどこを目指すのか――長谷川大貴の鉄道写真

はじめに

 「京都の川」は、もっと透き通っている印象だった。国立京都近代美術館のすぐ隣に流れる川を撮影しながらそう思った私だったが、そもそも鴨川と堀川以外の京都の川をあまり見ていないような気もする。京都に流れるおもな河川といえば、鴨川と堀川、そして桂川だろうか。京都市内の比較的中心に部屋を構えている私にとって、桂川が流れる嵐山区域は若干ながら遠い。遥か昔の平安京のころから住民を支えてきた都市のこれら三河川は、京都にとって昔から重要な水源であり、必要不可欠なものであった。大阪湾に面する「水都」大阪がそうであるように、川は昔から住民や物資の移動ルートとして重要だ。


 高度に現代化された今では、もはや川に船を浮かべて移動しようとする人は皆無だ。アスファルトによってきれいに整備された京都の大通りは京都市営バスが走り、そして古都京都の威厳を主張するかのように、都市規模の一つのスタータスたる地下鉄が、東西と南北に一本ずつ(東西に走るのは「東西線」、南北に走るのは「烏丸線」と名付けられている)が敷かれている。かつては市電も多く走っていたが、他の都市の例に及ばず、モータリゼーションによってバス転換を余儀なくされた。片道三車線ほどもある過剰な車線量を誇る堀川通は、かつて市電がそこに走っていた名残でもある。


 かつては無数に走っていた京都市電の規模にも関わらず、京都に地下鉄は未だに二本しかない。かつて大阪の実家から京都の祖母の自宅に向かうとき、京阪電車から地下鉄東西線に乗り換え、烏丸御池で烏丸線に乗り換えていた。幼稚園児ゆえに一人でどこにも行けない私にとって、祖母が朝早くから私を連れて地下鉄に乗せてくれたこと、そして関西のあらゆる鉄道に乗せてくれたことは、私にとってはかけがえのない大きな思い出として、印象に残っている。

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