②君を食べさせて? 私を殺していいから

十利ハレ

プロット

 人の血を吸わないと死んでしまう少女×殺人衝動に悩まされる痛みを感じない少年の共依存ラブコメ。


《世界観》

 日本。現実世界の高校が舞台。

 病気という形で異常体質を持つ少年少女が登場する。


《主要キャラクター》

名前:星待 鳴(ほしまち めい)

性別:男

年齢:17(高校二年生)

外見:175㎝・中肉中背・黒髪・目つきが悪い

病気:先天性無痛症→生まれつき痛みを感じるための神経が発達しづらく、痛覚が機能しにくい。そのためケガが多く、自分の体の異変に気付きにくい。

 殺人衝動:突発的に人を殺したい衝動に駆られる。殺したいと言うよりは、傷つけたい、血を見たい、痛がってる様子をみたいというのが適当である。自分が痛みを感じない体質のため、潜在意識で痛みに関して強い興味がある。殺人衝動を無理やり抑えている反動で、慢性的に気だるさや吐き気を感じている。


主要キャラクターとの関係


玲:彼女のミステリアスさに惹かれている。自分の衝動を受け入れてくれる相手を見つけて居心地の良さを感じるとともに、離れたくないと思っている。


綾:仲の良い後輩。困っているところを助けて仲良くなった。鳴の事情を知っている数少ない人物で、知ってなお仲よくしてくれていることに関してはすごく感謝している。


 セリフ例


「うぜえ。言いたいことあるならはっきり言えよ」

「ほら、遠慮せずに吸えよ。そういう契約だろ」

「まあ、お前に会えてよかったとは思ってるよ」


名前:旭日 玲(あさひ れい)

性別:女

年齢:17(高校二年生)

外見:149㎝・スレンダー・白髪長髪・半眼

病気:ヴァンパイア症候群:いくつかの体質、病気、先天的な疾患などが重なり、まるで吸血鬼のような性質を持っている。

 長く太陽光を浴びると皮膚が焼け爛れてしまう。

 傷の治癒力は異常で、腹部を貫かれても数分で完治する。

 定期的に人の血を摂取しなくては生きていけない。普段は輸血パックで誤魔化しているが、直接飲むことでした得られない要素もあるようで、輸血パックだけで誤魔化している玲は常に体調が悪い。得に頭痛が激しい。人から直接吸う場合、吸われた人間は失神するほどの激痛が走る。ふつうの食事もとれるが必須ではなく嗜好品としての意味合いである。


主要キャラクターとの関係


鳴:やっと全てをさらけ出しても問題ない相手と出会えた。鳴に対して多少ドライな反応であったりもするが、彼の存在に依存している。自分が鳴に取って必要なんだという実感ができるため、彼に殺されるのは嫌いじゃない。


綾:嫉妬の対象。鳴に自分以外にも事情を打ち明けて心を許せる相手がいることを不満に思っている。決して表に出さないように努めているけれど。


セリフ例

「それ君に関係ある? 用がないなら話しかけないで」

「私の目を見て。殺して。いいよ、我慢しなくて」

「こんなに体が軽いのは久しぶりだ。今ならスキップとかしちゃうかもしれない」


名前:加陽 綾(かや あや)

性別:女

年齢:16(高校一年生)

外見:154㎝・茶髪ボブ

病気:なし


主要キャラクターとの関係


鳴:仲のいい先輩。鳴の病気や殺人衝動を治してあげたいと思っている。そんな事情や多少の嫉妬もあり、玲との関係は快く思っていない様子。


玲:鳴に悪い影響を与えている女だと思っている。できるだけ関わらせたくない。


セリフ例

「私! 自分の目で見たものしか信じない性質なので!」

「それではいってみましょう! 先輩の病気を治そう大作戦です!」

「先輩は私のことも殺したいって思ってくれますか?」


《物語構成》

 プロローグ


・クラスメイトによる噂話

→教室で犬を殺したという男子生徒(鳴)がいること。クラスでいつも一人の女子生徒(玲)が吸血鬼であることを噂話するクラスの女子。

「ねえねえ、うちのクラスで犬を殺して停学になったやつがいるらしいよ」

「あ、それ知ってる。あいつだよね、ほら、いつも一人でいてすっごく目つきの悪い…………名前なんだっけ」

「でも、さすがにそういう噂があるってだけでしょ? ホントだとしたら相当ヤバいやつじゃん」

「噂話と言えば、もう一つ――吸血鬼の少女」

「ああ、彼女ね。肌は雪のように白いし、いつも日傘を差してるし、お人形さんのように美人だし、こっちの噂はちょっとわかるかも」

「でもそれだけじゃないの。隣のクラス子が見たらしいよ?」

「見たって何を?」

「彼女が――うちの生徒の首筋に歯を立てて血を吸ってるところ」


 第1章 鳴、玲の現状。契約を結ぶ二人。


 荒宮高校二年生――星待鳴はクラスに友達と呼べるものはおらず、いつも一人で過ごしていた。原因は目つきと態度の悪さ、そして、一年生の頃に高校に迷い込んだ犬を殺したという噂が広まったことである。


 鳴は先天性無痛症である。そのため日常的にけがが多い。そして、殺人衝動にも悩まされていた。普段は気を張って抑えており、そのために日常的に倦怠感や吐き気を感じていた。鳴の目つきの悪さや粗暴さはその体調の悪さも関係していた。

 事情があったとはいえ、一年生の時に犬を殺したというのは本当の話である。


 ある日の放課後。忘れものを教室に取りに来た鳴は、吸血鬼などと噂されているクラスメイト――旭日玲と鉢合わせる。彼女も鳴と同じようにいつも一人で友達はいない。いつも教室の隅で本を読んでいるような子だった。


 鳴は今日も気づかないうちにケガをしており、血を流していた。

 それを見た玲は思わず鳴の首筋に歯を立てて血を吸う。玲は吸血鬼症候群に悩まされており、日頃から酷い頭痛に悩まされていた。それは、人から直接血を吸うことでしか解消できないものであり、端的に言えば玲は限界だった。


「な、んで…………? 意識があるの?」


 血を吸い終わった後の玲は、驚いたような顔で鳴を見る。

 玲に血を吸われた人間は耐え難い激痛に見舞われ意識を失う。それが普通だったのに、鳴はなんともないような顔で玲を睨んでいる。


 血を吸われた鳴は、反射的に玲を振り払う。玲は転んだ拍子に腕を怪我してしまう。鳴はそのまま玲に襲い掛かり、彼女の細い首に手を掛ける。必死に殺人衝動に抗っているようであった。その時に、鳴は彼女の腕についた傷が一瞬で治るところを目撃する。


 玲と鳴はそれぞれ驚いたように互いを見る。

 そして、自分の特殊体質のことについて話した。


「私はあなたを食べる。その代わり、あなたは私を殺していい」


 こうして、普通の高校生活を送るために鳴と玲は契約を結ぶ。

 一つ、両者は学校内にて求められた時は契約行為になるべく応じること。

 一つ、この秘密は絶対に他言しないこと。

 一つ、もし、どちらかがの症状が完治した場合、この契約は破棄すること。


 第2章 契約の履行。上手く回り始める玲と鳴の日常。


 それから、契約通り鳴は殺人衝動に悩まされた時は玲を傷つけた。傷は直ぐ治り、彼女はけろっとしている。衝動が満たされた鳴は慢性的な倦怠感から解放された。

 玲もどうしても我慢できなくなった時は、玲を呼び出して血を吸った。先天性無痛症の鳴は痛みを感じなかった。直接血を吸うことができた玲は強い頭痛に悩まされることがなくなった。


 鳴は徐々にクラスメイトと普通に話せるようになる。頭痛から解放されて表情の鋭さが和らぎ、心に余裕ができたのだろう。自分の体質のことを知り、受け入れてくれている玲の存在にも救われていた。


 それは玲も同じだった。慢性的な頭痛が解消された玲はクラスに溶け込み、友達もできたようだった。玲も同じく、鳴の存在に救われていた。契約を結んだ鳴はずっと一緒にいてくれるだろうという信頼があった。


 こうして、互いに影響し合い二人の日常は明るいものへと変わっていった。


 二人の契約関係は続いている。

 クラスに馴染めるようになってからも、いや、クラスで馴染めたからこそ、自分の一番深い部分を知っている契約相手は、互いにとって特別なものなのだと実感した。

 二人が徐々に惹かれていく様は必然だったのだろう。

 言葉の刺々しさは変わらないものの、二人の距離は確実に縮まっていった。


 実は、鳴には自分の体質を知る人物が一人だけいる。

 後輩の――加陽綾である。綾は昔、鳴に助けられたことがあり、その関係で彼の体質を知っていた。綾は鳴の体質を治してあげたいと思っていた。

 鳴は綾に迷惑が掛かると思い、自分から積極的に関わろうとすることはなかった。

 綾は鳴が最近調子良さそうなことを指摘するが、契約がバレてはいけない鳴ははぐらかした。


 綾は鳴の体質を治そうと試行錯誤する。しかし、特に効果はないようだった。


 第3章 綾に契約関係がバレる。症状は治るが、契約関係を続けることを決意した鳴。


 鳴と玲の契約関係は続いている。二人の親密度も最初に比べて随分と高まって来た。両社ともクラスにも受け入れられたようで、充実した学園生活を送っていた。


 しかし、ある日――玲が鳴の血を吸っているところを綾に見られてしまう。

 二人は仕方なく、玲の体質のことと、二人が交わした契約のことを綾に話した。

 こんなことをしても何の解決にもならないし、いつかバレる、と綾は納得できない様子だった。


 綾はそれから、絶対に鳴の症状を治して見せると強く決意する。

 綾はそのために今まで以上に奔走する。


 そのかいもってか、鳴の体からふと二つの症状が消えた。

 綾は喜び、これで玲との契約行為もする必要もなくなったと言う。


 しかし、鳴は玲との契約行為を続けていた。

 先天性無痛症がなくなったせいで、血を吸われた際に耐えがたいほどの苦痛に襲われる。気合で意識を保つ鳴だったが、玲に怪しまれる。鳴はなんとか誤魔化した。

 殺人衝動もなくなったため、生き返るとしても玲を傷つけるのは抵抗があった。


 でも、ここで契約を解除してしまえば、玲は一人になってしまう。そう思って、鳴は症状が治ったことを隠して契約を続けるのだった。


 第4章 クライマックス。鳴は玲を選ぶ。


 鳴は痛みに耐えながら玲との契約行為を続けた。

 しかし、症状が治っていながらも契約関係を続けていたことが綾にバレてしまう。

 綾は玲に詰め寄り、鳴の症状が治っていることを告げ、鳴にはもう付きまとわないでほしいと訴えかける。


 その事実を知らなかった玲は酷く狼狽し、罪悪感を覚えた。互いに利益があるから契約関係を続けていたのだ。鳴を傷つけることは彼女にとっても本意ではなかった。


 玲は一方的に契約関係を解消。もう話しかけないでくれ、と彼の元を去る。

 教室で話しかけても無視をされ、気づけば玲は今までの一人ぼっちに戻っていた。

 比べて鳴の周りには仲良くなったクラスメイトがいた。


 鳴は一度しっかり話をしようと玲を呼び出す。

 そこで玲は初めて感情的に本音を漏らした。私には鳴しかいなかったのに、自分の体質を知って受け入れてくれる人が他にいることがずるい、自分だけ治ってずるい、と激情を吐き出した。そして、それを言ってしまったことを酷く後悔してその場から逃げ出した。


 鳴は玲を追おうとするが、そこへ綾が現れた。

 どうやら今の話を聞いていたらしい。

 綾は行かないでくれ、と鳴を必死に引き留める。


 しかし、鳴は玲を追うことを選んだ。


 鳴と玲は互いにとって契約関係以上の意味を持った相手だった。

 鳴はたとえ他の誰から何と思われても、玲を悲しませたくないと思った。

 考えた。玲を救う方法。もう一度彼女の隣に立つ方法。別に今更守りたい立場などない。自分は誰からどう思われてもいいから、やっぱり特別だった玲を助けたいと思った。


 そうして、鳴の決断は――。


 鳴は玲のいるところに戻るため、校庭で再び犬を殺した。


 学校内で大きな事件となり鳴は停学となった。

 クラスでは再び腫れもの扱い。どころか以前よりも酷い扱いになった。さすがに今回は綾にも呆れられた。


 玲は鳴に「バカなの? そんなことして私が喜ぶと思った?」と詰め寄る。

 鳴はそれに対して、「お前は俺と同じだから内心嬉しいはずだ」と「取り繕わずに本音で話せよ」と反論する。実際、玲も同じ立場なら鳴と同じことをしただろう。

 玲はこれから何があっても鳴の味方になろう、彼の隣にいようと強く心に誓うのだった。


 エピローグ


 これからの鳴と玲の日常。

 玲はどうしても我慢できない時に限り、鳴から血を吸った。

 学校で二人の、特に鳴の居場所はなかったが、それでも二人は互いが居ればよかった。

 鳴と玲はずっと一人だったから、心許せる一人もいることがどれだけ幸せか、とそう思うのだ。

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