ハートとちびうとちゅううとちょうう

望月 葉琉

ハートとちびうとちゅううとちょうう

 どこまでもどこまでも、果てしなく広がる緑の大地。

そこに横たわる山々の中に、「かいだん山」と呼ばれる、段々畑のような斜面の山が一つありました。

なかよしうさぎのピョン姉妹は、そのかいだん山の麓に住んでいました。

 ある日のこと。

ピョン姉妹はいつもの様に、三羽仲良くお昼寝をしていました。


「Zzz……Zzz……」


 おやおや?

何やら怪しい影がピョン姉妹のお家に近づいてきました。

大変!

みんな、起きて!!

あっ!!

なんと、ハートさんが末っ娘のちびうを連れて行ってしまいました。


「う~ん……」


 どうやら長女のちょううが目を覚ましたようです。


「あら? ちびうがいない!! ちゅうう、起きて! ちびうがいないの!!」


 ちゅううとちょううが外に出ると、ちょうどハートさんがちびうを連れて、かいだん山を登ろうとしているところでした。


「あっ! ちょっと、待ちなさい!! ちびうを返して!!」


 ちゅううが叫んで追いかけようとすると、ハートさんは慌てて山を登っていってしまいました。

ちょううも急いで追いかけます。


『待て~!!』

 山を登って……


『待て~!』

 下って。


『待て~』

 谷を登って……


『待てぇ……』

 下って。


 ちゅううもちょううも疲れてきて、そろそろ限界、というところで……。

あっ!!

逃げていたハートさんが地面の石ころに躓いて、転がっていってしまいました。


コロコロころころ


ころころゴロゴロ……


 そしてちびうが放り出されて、平らな地面でゴロ~ン!! と倒れてしまいました。


「ひゃあ! 大丈夫!?」


 放り出されてびっくりしたちびうは、それでも泣いていませんでした。

ハートさんが先に泣き出してしまったのです。


「どうしてこんなことしたの?」


 ちびうが優しく尋ねます。


「え~んえ~ん!! うさぎさんたちと仲良くしたかったんだよぅ!! 一人で寂しかったから、ちょっといたずらしちゃったんだよう!!」


 ハートさんはなかなか泣き止みません。


「なぁんだ。そんなことだったの? もう、しょうがないわねぇ」

「仲良くしたいなら、素直にそう言えばいいのよ」


 ちゅううとちょううも優しく声をかけました。


「本当? ボクと仲良くしてくれるの?」


 ハートさんが恐る恐る尋ねると……。


「もちろん!!」

「一緒に遊ぼう、ハートさん!」




 それからは。


ハートさんとうさぎのピョン姉妹、皆で仲良く過ごしましたとさ。




「ねぇハートさん! 今度は、何して遊ぶ?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハートとちびうとちゅううとちょうう 望月 葉琉 @mochihalu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ