第23話 増員

 デイビッドさんと何度か打ち合わせを繰り返し、予定やプランの見直しを行った。そして、パーティーの設営が始まろうとする直前。


 私は、会場の設営を任せる職人やスタッフについて考えていた。


 エンゲイト公爵家には、お抱えの優秀な職人集団とスタッフ達が居る。そして次のパーティーの設営も、その職人達に任せる予定だった。


 しかし今回は、色々な部分を改善して新しいことに挑戦する予定。その為、職人とスタッフの数を増やそうと提案するつもりだった。新たな作業が増えるだろうから、失敗しないように余裕を持っておくために。


 だけど、この提案には私情が入っている。


 以前、私がお世話になっていた人達にお願いしようと考えていた。彼らなら、私の考えを理解してくれる。一緒にパーティーを開いてきた経験があるので、きっと力になってくれるはずだ。


 だけど、エンゲイト公爵家に元から居る職人達はどう思うだろうか。誤解されないだろうか。自分達の代わりに外部から呼び寄せた人間達に、仕事を奪われるかもしれないと考えたら。


 それに、私の都合を押し付け過ぎじゃないだろうか。彼らを呼びたいと思っている。だけど私は責任者ではなく、アドバイザーを依頼されていた。あまり、口出しをし過ぎるのは良くないと思う。そう考えると、なかなか言い出せなかった。


 悩んだ私は、ウォルトン様に相談した。すると彼は、あっさりと悩みを解決してくれた。


「その者達をエンゲイト公爵家で雇ってもらうよう、父上にお願いしよう」

「よろしいのですか?」

「僕も参加した、あの素晴らしいパーティー会場を設営したのだろう? とても優秀な職人だろうから、是非とも欲しいな。父上も、そう思うはず。とにかく一度、話をしてみよう」

「……ありがとうございます!」


 ウォルトン様も賛成してくれた。そして、すぐにエンゲイト公爵家の当主様に話が通った。


 ウォルトン様の予想していた通りに、私の知り合いの職人達やスタッフを公爵家で受け入れてもらうことになった。


「勝手に話を進めてしまい申し訳ありません、デイビッドさん」

「いえいえ。むしろ、ありがとうございます、ベリンダお嬢様」


 まず先に、彼に話すべきだった。それなのに、私は感謝された。そして彼は、こう続けた。


「ちょうど良かったですよ。普段と違う作業が増えて、少し不安だったのです。人を増やすのは必要だと、私も考えていたところなので。良い職人を紹介してくれたのは非常に助かります」


 デイビッドさんは資料を確認しながら、懸念点も潰していく。


「無駄も省いて、費用も浮いていますから。人を増やしても問題ないでしょう。担当させる範囲を調整して、元から居る職人達の不満が溜まらないようにしましょうか。それでしたら、上手くいくと思いますよ」

「ありがとうございます。配置のプランについては、私の方でも考えておきます」


 ということで、職人達を増員することに決まった。それから数日後、新たに雇った職人やスタッフが会場予定地に到着した。久しぶりに会った彼らは皆、笑顔で挨拶をしてくれた。


「お久しぶりです、ベリンダお嬢様」

「皆、久しぶり。また、頼むわね」

「任せて下さい! 我々は全力で頑張りますよ」

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