僕と彼と君と君

パソコン

僕と彼と君と君

俺は、その世界で、ある男と出会ったんだ。

「おい、お前!何してるんだよ!」

「......あ?」

男は俺を睨みつけたかと思うと、突然俺を殴り飛ばした。

「ぐわっ!」

俺の脳内に走馬灯が流れた。

(ああ、これが“死”なんだな)

「おいおいどうしたぁ?こんなもんかよぉっ!?もっと俺を楽しませてくれぇっ!!」

男の攻撃は俺の命を奪う寸前まで来ていた。

その時だ。

「そこまでだっ!!」

「――!?」

誰かが男の背後に立っていた。

「誰だてめぇはっ!」

「僕は君たちと同じ存在だよ......」

「同じだとぉ......?」

「そうだ......君はもうわかっているだろう?」

「............」

男には分かっていた。

目の前の男が何者かということを。

「まさか......!」

「そのとおりだよ」

次の瞬間には、男の顔がみるみると変わっていく。

「うおおおおおっ!! お前はあの時の化け物ではないかぁっ!!!!」

そこには、かつて俺が殺したはずのあの大蜘蛛がいた。

「な、なんでお前がここにいるんだよおおおおおおお!!」

「フフフフフッ......そんなのはどうでもいいじゃないか。それよりさぁ、君ぃ? 僕のことは知っているんだろうねぇ~?」

「そ、そりゃあもちろんですよ!!」

それは、俺にとっても忘れたくても忘れられない相手だったからである。

「じゃあ聞くけどさあ......何で僕が君に殺されたのかわかるかなぁ~~??」「え............っ!!」

今思い返すと......こいつとは昔とある事件で対立していたのだ。

でも、結局あの時は......。

「ハハハッ......!そうだよそれなんだよねえぇぇぇ!! 君が僕に殺される理由はさあぁぁぁぁ!! 僕を裏切ったからなんだああああああああぁぁぁ!!!!」

俺は、この化け物を前に何も言い返せなかった。

「だからさァ......君も死んでよ」 そう言った瞬間......。 ――ブシャアッ!!! 俺は、奴によって胴体を真っ二つにされてしまっていた――。 そして俺は思った。「あれ......?俺って、こんなに弱かったっけ?」

しかし、そこで意識を失ったことで、今の俺の状況を把握することが出来たのだが......。

「アハハッ!!君の人生ってやっぱり面白いなぁっ!!」

――目の前にいたのはかつての敵の姿だった。

しかも、奴はさらにこう続けた。

「でも僕ね思うんだよねえぇっ! 人間っていうのは自分の力を超えたものを前にすると何もできない生き物だよねええええええええぇぇぇ!!!」

そう叫んだ直後、奴は俺に襲い掛かってきた。

「ヒイィィィイッ!!!! く、来るなっ! やめてくれぇぇえっ!!!!!!!」

あまりの出来事に足が竦んでしまって動くことさえままならない。

「いやあぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!

お助け―――――――――――――っっっ!!!!!」

このままじゃ確実に殺されてしまうと思った俺は思わず叫んでしまった。だが......。 「んぎゃああああぁあああぁぁああぁっ!?!?!?!?」

その瞬間だった。あいつの身体に赤い稲妻が走って奴が悲鳴を上げた。

「ぐわあああああああっ!?!? 目がぁああっ!!

目が見えなくなっちゃったよぉぉぉおぉぉっ!?!?!?!?」

この隙に逃げ出すことができた俺は何とか家まで戻ることができたんだ。

それから数日後のこと......。

「またあいつに襲われた!?」

「はい......今度は前よりも強くて......それに......目が見えない状態で襲い掛かられたんです」

再び現れた恐怖の存在、それを聞いた両親は俺を病院へ連れていった。

「......まさか、あの事件の犯人の正体が......」

俺が病院で検査した結果を聞いた父さんはそれを聞いて何かを確信したらしく。

その直後病室に来た母さんも俺を見てこう言った。

「ねぇ......ちょっとこっちに来てみて......?」

俺は言われた通りベッドに横になると、二人は顔を近づかせて耳元でこんなことを囁いたんだ。

「もしかしてだけど......あの子が言っていたのはあなたなんじゃないの?

ほら、あなたの家に置いてあった日記帳に書いてあったでしょ?

男の子と女の子の双子ちゃんが生まれたけど、

その直後に二人とも死んじゃったっていうやつよ......。

実はあの時私たちが見たのはあなたの背中じゃなくて二人の子供の方だったんだと思うの。

だからあの子は......あなたに助けてもらったことを感謝していたんじゃないかって思うわ」

そんな真実を知る由もなかった当時の俺は......。

「そっか......じゃああの子たちはあの時の子たちなんだ............ありがとう」

俺が二人に感謝の言葉を言った後、両親が帰った後の一人きりで俺はこんなことを考えてたんだ。

(今度あいつらが現れたらきっと俺が助けられるんだ......!)

そして、俺が退院した後、事件が起きた。

いつものようにネットでゲームをしていると、突然俺のスマホの通知音が鳴ったんだ。

何だろうと思って見てみると、そこには一言だけメッセージが書かれていた。

「助けてくれて......本当にありがとう」

その言葉を見た瞬間、目から涙が流れ落ちたんだ。

そしてそれがきっかけとなったのか俺は今までプレイしたことないゲームを次々に始めた。

最初は怖かったけど、やってみると面白いと感じるようになっていったんだ。

特にミステリーものの推理ものは何度も見返したりした。

特に俺はトリックとかを考えるのが好きでさ、そのおかげでミステリー小説を読むたびにどんどん詳しくなっていってね、それで俺はいつか探偵になりたいって考えるようになった。 そんな時にある人から言われたんだよ。

「君は今のままでいいのかい?」

その言葉に俺は思わず頷いた。

でも本当は分かっているんだ。自分が憧れていることに。

でも、自分に勇気が無かったからずっと言えなかった。

けれど、今なら言えるかもしれない。 俺はもう一歩踏み出そうと思ったんだ。

「今からでも遅くないよ、一緒に目指さないかい? シャーロックホームズのようになれる可能性を!」

その時の俺には、この言葉がとても魅力的に聞こえたんだ。

そして同時に思った、この人と一緒にいれば俺は変われる気がすると。

そう思ってからは早かった、まずは親に相談をした。

「私、探偵になりたい......!」

「......本気なんだな?」

「うん! だって、私は変わりたいもん!!」

私はこの時のためなら何でもできる気がした。

そのために私は自分を偽るようになった。

勉強も運動も何もかも完璧にこなせるように頑張ったんだ。

その過程で友達もたくさんできた。

皆優しくて大切な仲間だ。

それに、少しずつだけどファンも増えてきたし、今は楽しいと思えることも増えた。 この楽しさを失うわけにはいかないよね!!

だからこそ絶対にこの幸せを守らないといけない。

なのに............。

「最近また人気が出てきたよな、なんかヤバくねぇか!?」

「確かにヤバいな......だがこれはチャンスでもある」

何でこんなことが起きちゃったかな......?

せっかく上手くやってきたのに、全てが崩れてしまった。

しかも、その原因であるアイツはまだ現れないし......。

もしかして、このままだと私の人生には希望なんて無いのかな......?

いや、そんなはずは無い!!!

私が憧れたあの人みたいに、私も誰かに勇気を与えてあげられるようになりたい!!

そのためにはこんなところで挫けてちゃダメだよね?

そう考えた時だった、スマホにあるニュースが流れ込んできたのは。

「え......」 そこに映っていたのは、アイツの名前だった。

『次の犠牲者は────』

その文字を見た瞬間、私の心は限界を迎えたんだ。

「おいどうした? 急に立ち止まって?」

「............ううん、何でもないよ? 早く行こう!」

「お、おい待てよ!? 何かいきなり元気になったぞ......?」

彼が言っていた通りきっと私は無意識的に希望を見つけたかったんだと思う。

でもそれは単なる幻想でしかなかったんだと理解した時には遅かった。

「あ、ああああああああああ!!!」

私は泣いた。

絶望して大声で泣き叫んだ。

周りの人が何事かと思うぐらいの声で泣き叫んだ。

それほどまでに心が壊れそうになったのだ。

「ど、どうしたの白井君?」

彼は私を心配して声を掛けてくれたけど、それどころじゃなかった。

もう嫌だ、こんな生活したくない。

誰か助けてほしいという思いがどんどん増していった。

だからなのかは分からないけど、自然とこんなことを口走ってしまった。

「ねぇ......いっそのこと殺してくれないかなぁ......?」

そう言った後、ハッと我に戻った。

(何言ってるんだろ、私......)

そう思うと同時に罪悪感を感じた。

今の発言は彼の夢を潰すようなものだったからだ。

でも言ってしまったものは戻らないので、すぐに謝った。

「ごめ──っんむぅ!?」

その時だった、突然彼にキスをされたんだ。

「ごめんね白井君......! でも僕はまだ死ねないからね......!」

その時の彼の顔は悲しそうなものだった。

それでも私に笑顔を向けてくれる彼を見て、思わず涙を流してしまった。

やっぱりこの人は優しい人だと思いながら彼と接した。

そして半年くらい経ったある日のことだ。

「......なんであんなことを言ったんですか?」

病室から出れない時にふと気になったことを聞いてみた。

すると彼は真剣な表情で答えた。

「君に死んでほしくないからだよ。......君が僕の夢を守ってくれるならそれで良いって考えてたからさ」

まさかそんなことのためにこんなことをしていたのかと思いビックリしてしまった。「でもそのせいで君は今こうなってしまっているよね?

だったら僕が君の夢を叶えてやる!

そうしたら君は生きる意味を見つけられるはずだ!!」

その言葉を聞いた途端、私は再び涙を流してしまった。

まただ、また泣いてしまう自分がいる......。

でも今は不思議と嫌な気持ちはしなかった。

むしろ気持ちが楽になっていた。

「本当に......本当に叶えてくれるんですよね?」 そう言って私は彼に抱きついた。 彼はそれを笑顔で受け止めてこう言った。

「あぁ、絶対に実現させてみせるよ!!」

その言葉を聞いて安心した私はそのまま眠ってしまっていた。

この日から私は変わった。

彼を支えながら生きるために頑張ろうと心に決めたのだから......!

それから二年経ち、私たちは大学を卒業し、就職した。

あれから色々あったけど今では幸せに暮らしている。 今でもあの時のことは覚えている。

だけど一つだけ後悔していることがあるとしたら......。

「あの時キスしておけば良かったかな......」

この思いがこれからも続いていくことだろう。

だってあの時にもしやっておけばもっと幸せになれると思っていたんだから────

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

僕と彼と君と君 パソコン @meganepapadoragondesu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る