第29話 ベロニカ召喚

この呪いはかなり複雑な術式で構成されている。


並みの魔法使いではこの構成すら見抜くことができないだろう。


だが、どんな呪いの術式にも穴はある……と思う。


「けっこームズイな」


思わずそんな言葉が口をつく。


しかもこの呪い”祟り”が付いている。


こいつが付いている呪いは呪いが解除された際に解呪者か呪いをかけられた対象に悪影響を及ぼす効果を持つ。


つまり、この呪い解除すると俺か二ムリに何かしらの悪影響を与えるわけだ。


「その悪影響ってのが何なのかが分かればいいんだけど……」




 「アレン、かれこれ2時間くらいじっとしてて動かないけど」


レネは二ムリの呪印を睨みつけながら、じっと立ち止まっているアレンの後ろを行ったり来たりしている。


「アレンが魔法関係の問題であんなにも時間がかかっているのは久しぶりだや」


アンは物珍しそうに、そしてどこか楽しそうにアレンを見つめていた。



 仕方ない、メモ機能を使うか。


自分の持ち合わせている知識でどこまで通用するのか試してみたが、どうやら限界のようだ。


俺はメモ機能を起動し、呪い、構成、祟りで検索する。


1秒もかからずにメモはその用語が書いてある部分を絞り出してくれる。


………………なるほど。


呪いの祟りを読み解く場合は、呪いをかけた者の狙いから逆算して考えると良いとな。


ベロニカの狙いか……それはきっと女王を苦しめること。


んでその女王が一番苦しむのは、二ムリが苦しむことだ。


つまり、二ムリを苦しめる事が女王を苦しめる事につながる。


二ムリを今苦しめている感情は自分のせいでエルフたちが殺されてしまったという罪悪感。


ってことは二ムリの罪悪感を最も高めることが祟りになる。


「クソ性格の悪い女なんだな、そのベロニカってのは」


恐らく祟りは二ムリの精神を乗っ取り、自身の手でエルフを殺させる…………洗脳魔法の発動だろう。


そんな性格の悪い魔法には、特大の反転魔法をくらわしてやる。


ベロニカさんよ……ジレント式は初級魔法を上級レベルにまで引き上げる代物であるが、ではそのジレント式を使って元より上級の魔法を使ったらどうなると思う?


残念ながら精神浄化系の魔法は俺の唯一の得意分野だ。


お見舞いしてやんよ。


「英雄の凱旋だ 上級魔法ブレイブ


その瞬間二ムリのお腹にできていた、巨大な呪印がガラスが割れるような音をたてながら消失した。


――エルフ族のことをこんなに考えている女の子が、一番苦しんで、一番泣いている。


そんな世界あってたまるかよ……


さぁ、呪いを解除したぞ!




 「散々忠告して差し上げましたよ、愚か者が」


その声が聞こえると同時に――刺された?


そう勘違いしてしまうほどの殺気が俺の背中を襲う。


振り向くをそこにはとても身長2メートル超える背中から真っ黒い翼を生やした女が呆れ顔で立っていた。


「お前がベロニカか……」


とてつもない存在感だ。


レネとアンの魔力を微かにしか感じ取れない。


それだけこいつの魔力がデカすぎるのだ。


「――呪いを解除するとどうなるかその小娘から聞いていなかったのですか? クソ野郎」


巨大なおっぱいを左右に揺らしながらベロニカは自身のこめかみを指でツンとつく。


「にしても我の呪いを無傷で解除するとは……何者だ。ゴミクズ」


物凄い眼光で俺を睨みつけてくる。


……しまった! まさか呪いを解除してからこんなノータイムで現れるとは想定外だった。


「アン!! 頼む!」


俺はベロニカの圧を無視しアンの名前を呼ぶ。


「了解だや!!」


アンはそれを合図に転移魔法を発動させる。


まずは二ムリを安全な場所に移動させなければ。


「そんなことさせると思っておいでですか? カス」


ベロニカ一瞬でアンに近づきその喉元に向けて鋭い爪を突き刺そうとするが――


間一髪、レネが剣でそれを食い止める。


ガキンッという金属音と真っ赤な火花が部屋に飛び散る。


「おばさん、そんなことさせるわけないでしょ?」


「ほう、この速度に反応なされるのですね。 小娘」


ベロニカはギザギザの歯をむき出して笑う。


「いくだや! 転移魔法!!」


レネが自分を守ってくれると信じていたアンはベロニカに攻撃されたときも全く臆することなく、詠唱を続けていた。


おかげで最速で魔法を使用することができる。


アンの転移魔法で二ムリ、アン、レネ、俺が転移する………………へ?


いや、転移するのは二ムリだけでいいんだけど?


アンさん、俺たちはここに残ってベロニカと戦わないとなんですけど!?


「ちょっとアンさん!?」


俺たち全然通じ合ってなかった!?


かくして俺たちは敵前逃亡ともいえる転移をしてしまったのであった。



《あとがき》


遅くなって申し訳ありません!!!!!!


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次回は1月 18日 水曜日の20時46分に投稿します。


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異世界にクラス転移したが与えらたのは、はずれスキル『メモ』。実はメモに書いたことは完璧に記憶できるので難易度Sな魔法も丸暗記で使えます~純粋田舎娘と勇者少女と艶やかエルフとヤンデレストーカーと共に~ プリントを後ろに回して!! @sannnnyyy

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