第4話 終のクルマ スバルWRX S4

「終のクルマ」スバルWRX S4


 ワシは借り物の真っ白いS4を人気のないPAに停めて、前や後ろや斜めや上や下からじっくり見ておりました。

 小一時間ばかりドライブしましたが、その運動性というか動力性能というか、とにかくワシの理想通りに動くドライバビリティにすっかり魅せられて、もう半分以上買う気になっていたのでした。

 スバルWRXS4(STIスポーツEX)。

 はっきりいってほしいと思いました。


 ワシは還暦をだいぶ過ぎてもう少し頑張ったら年金がもらえる歳が近づいてきたというか、今年の誕生日からやっと年金生活ができるようになります。

 思えば、いつの間にかうやむやになった旧社保庁の年金使い込みのおかげで、どれだけ嫌な思いをして首を長くしてこの日を待つ続けていたことでしょう。

「おい、社保庁、てめえら、ワシは死んでもお前たちの悪行は絶対に忘れんし、いつかきっと復讐してやるけえ憶えちょけよ。」と毎日毎日臥薪嘗胆の如くはらわたが煮えくり返っているのですが、その怒りは尽きることなくますます増強していく今日このこの頃であります。


 というわけで、高齢になってきたワシは、そろそろ終のクルマを無意識に探すようになってきました。

 340馬力のMTの二人乗りとか、280馬のSUVとか、趣味丸出しのキューブとか大好きなハスラー等々、それらのクルマを維持する気力も体力もそれから経済力もたいそう低下しているこの頃でした。

 じゃからワシは、ハスラーだけを残して他のクルマを一台にまとめようと思うようになりました。これで楽になる。きっと楽になる。冬夏タイヤを組み替えるたんびに、3台分12本のタイヤを洗って乾かして、挟まっている小石を取って、車庫にカバーかけて保管したり、年に最低8回は点検車検オイル交換でディーラに行ったり、洗車したり掃除機かけたり整備したりボディーカバーを洗ったり、バッテリーを定期的に充電したりタイヤの空気圧を測ったり、もともとクルマに関しては生真面目なワシですので忙しいことこの上なくて、はっきり言ってだんだん面倒になってきたのでした。

(Zのスタッドレスはないので全部で12本ね。ボケて間違えたのではありません。)


 ワシは、還暦過ぎて年寄りで腰が痛くて枯れ果てつつある自分にふさわしい終のクルマを探していました。

 条件は、ATで数人でわいわい言いながら乗れて、長距離もこなせるある程度の大きさのクルマでええなと思います。

 それから、ある程度の動力性能が絶対に必要じゃのう。なしてかというと

もしかしたらバカなファードがあおり運転してくるかもしれませんし、運転下手くそなスポーツカーもどきが追いかけてくるかもしれません。それから最近多い安いガイシャ。こいつらは下手くそなのにいきった運転をするので油断なりません。

 そんなときに、そいつらを軽く振り切って逃げることができる動力性能に余裕にあるクルマがやっぱり絶対条件かのうと思うのです。(←ぜんぜん懲りていない)


 そうやって考えて、第一候補はこの目の前にある新型WRX S4だったのです。

ワシは新型を運転するのは今日が初めてだったのですが、とても気に入りました。速くて気持ち良くて、それから乗り心地も思ったより良くて、十分です。ワシはこれなら北朝鮮のミサイルが来ても引けを取らないような気がして、たいそう嬉しく思っておりました。

 早速かえって契約だ契約だと思っていたのですが、どうしても気に食わないところが一つありました。

 走り、価格、装備その他100点満点で、とてもいいクルマで今すぐにでも欲しいのですが、どうしてもいやなところが一つあるのです。

 それは「穴」ボンネットの穴、エアスクープ?エアダクト?とにかくものすごく大きくてボンネットの真ん中にドンと居座っていて、不細工ですべてを台無しにしてくれている「穴」が気に食わないのでした。

 ご存じのように、インタークーラーの冷却ダクトです。カッコウだけのトヨタのクルマと違ってちゃんとインタークーラーを冷やす機能している機能部品です。

根っからのスバリストの方は、水平対向エンジンのターボの証だとかパワーを誇示する証だとか、そりゃあもういろんな思い込みのある「穴」ですが、ワシははっきりいって不細工で不要だと思っています。

 水平対向エンジンで、構造上インタークーラーをエンジンの上に配置せざるを得ないのは理解できますし、その位置にあるインタークーラーに風を当てるには、あの穴が不可欠であることもよくわかります。でも不細工だと思う。どうにかならんのんでしょうか。

 ワシのSJフォレスターは、前のS4と同じ直噴ターボエンジンで280馬力で鬼のような加速をして、インタークーラーもエンジン真上についていますが、穴はありません。穴がないので前から吸った空気をボンネット裏のダクトを通して導くようになっています。(昔のブルーバードSSSアテーサのCA18DET方式)あの穴がないのでとてもすっきりしているし視界もいいし、だいたいワシはあの穴があったらフォレスターを買わなかった。そうしたらこんなにいいクルマに出会えなかったし、スバル車の良さを知ることもなかったはずです。(あとついでに言わせてもらえば、たかだか2400ccなのに、これ見よがしの4本出しマフラーもトヨタ車のようで嫌い。)


 ワシはあの穴がどうしてもイヤでその日は契約することができませんでした。さんざん乗り回して申し訳なかったのですが、クルマ自体はとてもいいし欲しいということもわかったので、試乗させてもらって良かったと思います。

クルマを返すときに

「穴さえなければ今すぐにでも買わせていただきたい。」

などとほざいたワシを優しく見送ってくださってありかとうございました。でも本当です。「穴」さえなければ、「穴」さえないS4が発売されたら、ワシは明日にでも買いに来ますから許してください。

 スバルさん。穴のないS4を買えるようにしてください。多少馬力が落ちても構いません。というかあえて2400CCにして馬力を先代よりも落として乗りやすさ、運転のしやすさを狙った素晴らしさに感銘しました。たから馬力は少々落ちても気にならないのです。

 でもクルマはよかった。本当に良かった。しつこいよういですが、穴さえなければワシは印鑑を押していました、絶対に。


 というわけで、「終のクルマ」選びは、まだまだ続きそうです。


追伸

先日、白い先代のS4を見かけました。やっぱり渋いですね。動きを追ってみると、スムーズでマナーが良くて、とても運転が上手そうな方でした。スバルのドライバーってこういう方が多いような気がします。ちょっと憧れましたね。

でも先代も「穴」と目立たないけどしっかり「4本出しマフラー」で、すべてを台無しにしていたように感じてしまいました。

 穴のないS4を探して、旅はまだまだ続きそうです。


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