第4話

まどろんでいると、窓ガラスを叩く音で目を覚ました。ちょっとぉ、何なの? 美容には睡眠が大切なのよ!! 誰よ、邪魔する奴は!


「なによ、ボスカラス」


窓を叩いていたのはボスカラスだった。ムカつきながら窓の鍵を開ける。


「おい、てめェ。情報持ってきたオレになんて口の利き方だァ」


「あら、何かあったの?」


「第一オージがパーチィでコンニャクハキしたが、お前のとこの義兄がしっかりやり返したァ。オージと浮気相手はレンコーされ、結局コンニャク、じゃなかったコンヤクはなくなったぜェ。お前のとこのお姫様は無事だァ。もうすぐ帰ってくらァ」


あら、コンニャクじゃなくてコンヤクだったわね、そうよね。


「まぁ、そうなのね。ありがとう」


良かったわぁ。あのまま下僕がイジメたとかで捕まっちゃうかと思ったわ。帰ってくるならマッサージもまたしてもらえるわね。おやつもしっかりもらえるし。


「お前、まだ思い出さねぇのカァ?」


「何の話よ?」


「いや、こっちの話だァ。じゃあなァ」


ボスカラスは真っ黒な目でアタクチをのぞきこみ意味深なことを言うと、さっさと羽ばたいていった。

何なのよ、あいつ。もしかして仲間の復讐を派手にしたかったのかしら? それなら勝手にやったらいいのに。


下僕と下僕2番はその後すぐに帰ってきた。


出迎えをしたが、二人とも満足そうな顔だ。行きより距離縮まってるし。コンニャクハキされた人には見えないわぁ。もうさっさとコンニャクだかコンヤクだかしちゃいなさいよ。

はぁ、ほんと世話が焼ける。

でも、下々の者達のことを考えるのも高貴なるアタクチの務めよね。「のぶれす・おぶりーじゅ」ってやつかしら。



翌朝、下僕2番と加齢臭親父と香水臭い母親はお城に出掛けて行った。


イシャリョーとか、慌てて帰ってきた国王ヘーカとの話し合いがあるらしい。下僕はセーシンテキクツウを受けたとのことで一緒にはいかず、お留守番だ。


人間同士の話し合いにアタクチの出る幕はないわね。せいぜい、アタクチのためにおやつのお金を分捕ってきてほしいわ。


お気に入りのクッションの上でウトウトしていると、何やら屋敷が騒がしい。

あら、もう帰ってきたのかしら。下僕も部屋にいないし、どうしたのかしら。

優雅に廊下に出ると、侍女たちがバタバタしている。聞き耳を立てると予想外の来客があったようだ。


なんか嫌な予感するわね。


「チュウッ、ジョッゼフィーヌ様!」


上から声がしたので見るとネズミ達が5匹、天井に固まっている。

てゆーか、アタクチの気品あふれる名前に変なスタッカートつけないでよ。


「第二オージが来てるっチュウ! あの第一オージの弟だチュウ」

「チュウ、食べないで! あいつ、オーイを狙ってるってウワサだっチュウ。なんかヤな奴だチュウ」

「お姫様にコンニャクを申し込んでるっチュウ!!」

「部屋に入れなくてヤバイっチュウ~!!」

「なんかゴエーキシが扉の前にいるんだチュー」


5匹が口にした言葉にアタクチは身を翻した。親と下僕2番がいない間に何してくれとんじゃ!


「あ、ジョゼフィーヌ様!!」


途中で侍女に止められたが無視する。頭が高いわ!

見慣れないゴエーキシ達が立っている扉を見つけた。下僕の側によくいる侍女が部屋に入れてもらおうとしているが、首を振って中に入れないようにしている。


はぁぁあ? 何なの、こいつら。ここはアタクチの家よ! 何を勝手なことしてんのよ! お前ら頭が高いのよ!


アタクチは華麗にジャンプして侍女とゴエーキシの間に躍り出る。そして美しい爪を一閃させた。


「ぎゃあっ!」

「ジョゼフィーヌ様っ!」


ふん、オージのゴエーキシって顔が良くないとなれないんでしょう? あんたの顔をアタクチの爪でもっと美しくしといてあげたわ。その美しい3本線、大切になさいよ!


ジャンプした勢いのままドアノブにしがみつき、体当たりする。

ちょっと扉が開いて隙間ができたので、部屋の中に飛び降りた。

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