終章【萌芽】

九月二十一日

 適度な気温。適度な明るさ。適度な静けさ。

 それはそれは、心地の好い朝だった。

 目を覚ますと、隣では既に華憐ちゃんが起きている。寝起きからその美しいご尊顔を拝謁できることに心から感謝し、眠気眼を擦っては、そのお顔を心ゆくまで眺める。

 下から見上げる角度でも彼女は美しく、どんな角度でさえ彼女に死角はない。

 今日も今日とて、彼女は美しく、朗らかな朝日に照らされ、より一層、美しく輝く彼女。だが、私は、そんな彼女の姿に、どこかいつもと異なる雰囲気を感じた。

 私は起き上がり、彼女の顔を正面から観察する。

 そして、小首を傾げる少女の顔に穴が空くほど眺めた後、私は小さく言った。






「華憐ちゃん、髪伸びた?」








――――――『Camellia』――――――

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Camellia 接木なじむ @komotishishamo

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