第25話 謎の強キャラ感

翌日、せっかくの休みだけど、俺はクラスメイト達との交友関係を深めるためにカラオケに付き合っていた。


水瀬さんが居ないので、面白くはなかったけど、それなりにクラスメイト達の性格を把握出来たのは収穫と言えよう。


「春斗、歌上手いのな」


一緒にドリンクバーを取りに席を立った岡田が、ドアを閉めてからそんな事を言う。


「普通じゃない?まあ、それなりに付き合いでは来てるけど」

「へー、まあ、春斗らしいかもな」

「そういう岡田も、歌上手いじゃん。しかも演歌が様になる高校生は初めて見たかも」


烏龍茶を選んでグラスに入れながら、先程の岡田の歌う様子を思い出すけど、ポーズから何から様になってて、ある意味凄かった。


「爺ちゃんに教わってな。昔の曲なら多分一通り歌えるぞ」

「そりゃ凄い」


それはともかく、その場で二回もジュースを入れてから、一気に飲み干すのは行儀が悪いから止めなさいと言おうか迷って、面倒なので放置しておくことにする。


「にしてもここのポテト不味過ぎじゃね?」

「まあ、その分安いからいいんじゃない」

「量だけはあるしな。そういや、明日は何か用事あるか?」

「結構大切な先約ならあるよ」

「なるほど、それなら誘えないか。残念だが」


全然残念そうではないが、岡田としても天気の話題くらいの軽いノリのようなので、問題ないだろう。


正直、明日の水瀬さんとのカラオケにワクワクな俺としては今日は前座も前座なので早く明日になって欲しいくらいのテンションで臨んでいるのだけど、クラスメイト達を後々上手くコントロールするために必要な下準備だけはしておかないとなので、もう一仕事頑張らないと。


「明日、何かあるの?」

「いや、今日はえらく退屈そうだったし、ストレス発散に付き合ってもいいかもと思っただけだ」


……驚いたな。


態度には微塵も出てないし、誰にも気付かれてないと思っていたのだけど、岡田にはそう見えたらしい。


「そんなに退屈そうに見えた?」

「何となくそう思っただけだ。明日の話題なったら明るくなったし要らない心配みたいで何よりだ」


水瀬さんとの関係について、察してると言うよりは、俺の様子から自然にそんな感想になったような岡田にやはりこいつは大物なのかもしれないと改めて思った。


「お、あの店員さん、慌ててて、ポテト落していったな。勿体ない」


そう言って、平然と拾い食い(俗に言う30秒ルール by岡田)をした様子を見るに、そうじゃない可能性も高そうだけど……まあ、それはそれ。


何にしても、残りの時間を上手いこと過ごそうと気合いを入れ直しておくに越したことはないかもなぁとは思わされたのであった。








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