第7話

第7話 (その1)

 やがて、ひととおり銃声が鳴り止んだ頃になって、今更のように地元の官憲が屋敷に踏み込んできて、唯一の生存者である私は救助された。

 軍の特殊部隊がやってきて作戦行動が展開されるというだけでも、閑静な地方の町にしてみれば大きな事件だったのに、それが突入作戦に失敗して全滅、部隊の生存者が一人もいないなどと大惨劇もいいところだったが、厳しい箝口令が敷かれ、表向きごく小さな事故か何かのように扱われているようだった。もちろん、あれだけけたたましい銃声が響いていたのだから付近の住民は散々肝を冷やしただろうが、元々屋敷の住人が怪しげな外国人であったことは周知の事実だったので、仮にそれなりの事件ではあっても、さもありなんと思われる出来事だったのかも知れない。

 いずれにせよ、私は唯一の生存者として、重要参考人という位置づけで地元の病院の個室にほぼ軟禁状態となっていたので、そんな町の様子を直接目で見て確かめられたわけでもなかったのだけれど。

 私は自由の身でこそ無かったが、傷も浅くはなかったし、それに私がどのような事件にどのように連座しているかを知っている者は皆死んだあとで、王都からの通達ひとつを受けただけで、大して事情も知らないような地元の官憲が私の警護に当たっていただけだった。そこで私は厳しい尋問にあうでもなく、ただ遠巻きに見張られているだけの、実に所在ない日々を送っていたのだった。

 結局、あとから来た地元の官憲の者達が、あの惨劇の屋敷で、兄の造り上げた芸術品のようなホムンクルスに遭遇することは無かった。私自身が探索に立ち会ったわけではないので、彼女がどこかにうまく隠れ潜んでいたのか、彼らの捜索の努力が足りなかったのか、その時点ですでにその場を遠く離れていたのか、それは定かではなかったけれど、いずれにせよ、あれ以来誰もメアリーアンの姿を見てはいなかったのだ。

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