第一部 混沌に塗れた学園生活

第一話 平和……?

•平和ボケした日常

「ふぁ〜〜……」

小鳥の囀りと共に目覚めた一人の少女。起きてすぐ、カーテンを勢いよく開け、窓を全開にした。開けたところからほのぼのとした春の陽気な空気が流れ込んでくる。この空気を吸うのが毎年のこの時期の彼女のこうれいぎょうじだ。その後、彼女の部屋の向かいにある洗面台へ向かい顔を冷水で洗う。これもまた彼女の恒例行事の一つだ。

「今日が入学式かぁ…ともだちできるかなあ…」

そんな軽い独り言を呟きながら1階のリビングに向かう。

「おはよ」

すでに起きて朝食を食べていた兄だ。彼の名前は西原隆之介。いろいろ複雑だが、実の兄では無い。

「おはよお」

ゆるい挨拶を返し、用意されている朝食をいただく。どうやら両親はすでに仕事に出かけたらしい。

(入学式ぐらい見に来てくれてもいいのに)

心の中で呟く。その直後、背筋が凍るような冷酷な視線を感じた。咄嗟に振り返るがもちろんそこにはだれもいない。

「どうした?」

兄が聞いてきた。彼女は口に含んでいた白米を飲み込まずに、

「なんでもない!」

「お前その癖直した方がいいぞ」

「何が?」

じぶんでは気づいていないらしい。

「その、話しかけられたら口の中に入っててもしゃべっちゃう癖」

「それ、おとといパパにも言われた…おにいもパパと同じなの?」

「あのなぁ、パパと同じとかじゃなくてマナーのことを言ってるんだ。みんな同じこと言うと思うぞ」

「はぁ〜い」

気だるそうな返事をし、そのまま無言で朝食をとる。

「ごちそうさまでした〜」

隆之介が先に食べ終わって日本ではお馴染みの挨拶をする。

「食べ終わったら流しに置いといて。洗っとくから」

「わぁ〜おにいもかっこいいとこあるじゃん!」

「お前癖治ってないぞ」

「んんんんんん(ごめんなさい)」


朝食を終え、私的なことは大体済まし、中学校3年生のときから気に入っているボブ寄りの髪をセットする。

(高校生になるし髪型も変えてみようかな)

そんなことを考え、いろいろな髪型を試す。『あああああこれじゃない!これじゃない!これじゃなーーい!』結局髪型は戻った。

 ベットの横にあるクローゼットから埃ひとつついていないほど綺麗な制服を取り出し、それに身を包む。そのまま姿鏡の前へ行き

(制服着るだけで意外と雰囲気出るものなんだね)

そんな自己満足をした。そうこうしてるうちに家を出なければならない時間に近づく、学校指定のカバンに財布とスマホをいれ、部屋を出た。刹那、朝食の時と同じ視線を感じた。

(...?これは何?)

疑問に思った彼女だが、数秒後には忘れたように新しい学園生活に胸を躍らせた。

履きなれていない革靴を靴べらを使って履き、

「行ってきまーーーす!」

「いってらしゃい」

隆之介に向かって出かけの挨拶をし、勢いよく玄関の扉を開けた。

ーーーーーーーーーここから憂鬱まみれの日々が待ってるとも知らずに……

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