第8話 剣舞 二

「ええっ、何度もできないの? 豊蕾フェンレイ、あの回転斬り」

 晩餐の翌日、朝日が差す裏庭で、芝に座る鈴香リンシャンが目を丸くして叫んだ。

「ああ。あの技は頭に負担が掛かるからな」

 剣舞の動きを試そうと木刀を片手に動いていた。鈴香はついてきたいと言うので傍で見てもらっている。

「でもさ、あれが一番いい動きしてたじゃない」

 そう言いながら、鈴香は架空の剣を横に薙ぐ仕草をした。その剣先は空を切る。

「取り入れたいとは思うが、せいぜい一回か二回くらいだろうな」

「そっかぁ。それじゃあ、はじめに一回アレを決めてから……」

 鈴香はその舞の手順について思案し始めたらしい。ぶつぶつと言いながら俯いてしまった。

 蓮玉レンイ様から剣舞がどういうものかというのを鈴香はみっちり聞いてきたらしく、それを再現しようとしているようだ。剣舞を見たことがない私にとって、それはとてもありがたかった。だが、たぶん、洗濯の仕事をすっぽかしてまでやってくれていると思うのだが……。

「なぁ……なんでここまでしてくれるんだ?」

 そう尋ねると、鈴香は一瞬きょとんとした顔をして、すぐに笑った。

「ふふ……わからないかなぁ?」

 わからないから聞いているのだが……まいったな……。困ってしまう私に構わず、鈴香は私の横に来て、肩を合わせてくる。

「ねえ、ちょっとやってみせてよ」

「あ、ああ……」

 鈴香が、彼女の思い描く剣舞を私に教えてくれる。その動作をひとつひとつ、順番にやってみせていった。かなり具体的な指示を出してくるし、その通りに動けば、確かに舞の体裁が整う。横に回りながら三度振って風音を鳴らすと、鈴香は拍手してくれた。

「いい動き! 豊蕾、やっぱりすごいなあ」

「いや、鈴香のおかげだと思うぞ。鈴香は芸術的な才能があるよな。舞いもそうだが、髪結い、化粧……鈴香に教わってこなければ、今の私はないだろう」

「褒めすぎだって。豊蕾の飲み込みが早いんだよ。もう、教えることが無くなって寂しいんだよね」

「じゃあ今度は剣舞だな。しっかりと教えてもらうぞ」

「うん。任せて」

 大きく頷いた鈴香は顔を上げ笑顔を見せたが、ふと、視線を外される。

「……ぜんぶ菊花様のため、なんだよね……」

 小声でなにか呟いたようだが、私には聞き取れなかった。

「ん? どうした?」

「ううん、なんでもない!」

 彼女の笑顔を陽の光が照らした。


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 駆け足で戻る鈴香と別れ、部屋に帰る途中、廊下で玉英イインを見かけた。彼女は鈴香と交代して休憩時間に入ったらしく、落ち着いた様子で微笑んでいた。

「豊蕾。剣舞はできそう?」

「ああ。鈴香と蓮玉様のおかげでうまくいきそうだ。でも今更だが、陛下に酒の席で言われたことなど、まともに受け取ってよかったのだろうか?」

 これは酒宴のあとで冷静になって考えたことなのだが、玉英はさして気にすることでもないという風に頷く。

「いいのよ。おそらく、王陛下はきちんとお考えになってのことだと思うから」

「そうなのか?」

「ええ。一見、軽そうにお見えになるけれど、本当は聡明なお方よ。建国以来ずっと国を守って来られたお方なのだから」

「そういうものか……」

 たしかに、そうかもなとは私も思った。王妃の悪い心が解かれた隙に、王は狙いすましてあの発言をしたのでは。

「菊花様に最も喜ばれる催しは何か……王陛下はきっとそれを考慮しておられるのよ」

「え……」

 それが、私の剣舞だというのか? 菊花様にとって、一番の贈り物が。

「ふふ、豊蕾ったら変な顔」

 笑われて私は思わず顔を手で覆った。今どんな顔をしていた!?

「な、なにを……」

「豊蕾」

 突然、玉英は真剣な顔をして、周囲を見渡す。内緒話をする仕草だ。

「話したでしょう? 菊花様の秘密について」

「……ああ」

 菊花様が王妃ではなく使用人の子であるという話は、最初に玉英から聞いたものだった。

「……虐められていたのよ。王女たちに……」

 玉英は周囲に目を配らせながら呟いた。少し間を空けて続ける。

「何を言われても、何をされても、菊花様は笑顔だった。あなたが初めて出会った頃の菊花様、覚えているでしょう?」

「常に笑顔を振りまいていた。どんな悪口を言われようと」

「でもね、ある日、見てしまったの。菊花様が……ひとり、泣かれていたのを……。後悔したわ。私は自分の立場を気にしているばかりに、菊花様に何もしてあげられなかったから……。でも、あなたが本気で菊花様を救おうとしていたから……応援すると決めたの」

「私は、男どもに混じって暗殺稼業をしていたとき、奴らに軽んじられていた。だから、菊花様がひとり除け者にされる気持ちがわかったんだ。それが謂れのない理由によるものだったから、余計に腹が立って……」

「そう……でも、今はどうかしら?」

「どうって、同じだ。蓮玉様以外の王子王女はいまだに菊花様に対して……」

「そのことではなくて、豊蕾、あなたはどうして菊花様を守りたいのかしら?」

 私が、菊花様を守りたいと思う理由……?

「……そうだな。今は、菊花様をお守りしたい。菊花様その人を……って、何を言わせるんだ!?」

 慌てて口を押えるがもう遅い。顔が熱くなっているのがわかった。玉英はくすくすと笑っている。

「ふふ……ごめんなさいね。ただ聞いてみただけよ」

「ならそんな神妙な顔で聞くんじゃない……!」

 玉英はまともな人物なのだが、時折からかってくるので油断ならない。今もわざと私を恥ずかしがらせたに違いない。

「ふふふっ。じゃあ、菊花様をどうかよろしくね」

 玉英はそう言って立ち去ってしまった。

 まあ、彼女が菊花様を大事に思う気持ちは間違いないはずだ。それだけは信じておこうと思った。


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 程なくして、王の手配により剣舞の師範が来てくれた。わざわざ宮廷まで来てくださったのだ。それから何日も稽古を繰り返した。鈴香の意見も引き続き聞きつつ練習して、なんとか形になってきたのだ。


 そしてある夜、隣の部屋の菊花様が眠りについた頃合いに、私は自室の扉を開いた。音が立たないようゆっくりと閉じる。そのまま足音を立てないよう慎重に廊下を進む。腰には、王から預かっているあの儀礼用の直剣を携えていた。警備兵に軽く挨拶しながら、裏庭へ向かう。夜道は月明かりに照らされている。冬の冷たい空気が肌を刺すようだった。

 裏庭は誰も居ない。いつも通り藁人形や的などの稽古道具が置いてあり、夜に見るその風景は少し不気味だ。庭の中央、芝のはげた場所に立つ。

 静かに剣を抜いた。月の光に反射して刀身が輝く。炎の紋様から放たれるその輝きに魅入られてしまいそうになったが、気を引き締めて柄を握り直す。

 呼吸を整える。本番は近い。就寝前に、私は剣舞の動作を一通りさらうためにここへ来た。一息吸って動き出し、剣を振るう。その動作一つ一つに集中しながら、頭の中に思い描いた動きを再現していく。

 何度も繰り出すこの斬撃は、実戦では使い物にならない。二撃、もしくは一撃が理想。攻めたてるにしても、相手に予測できぬ、流れに逆らった動きでなければならない。剣舞はその逆だ。流れるように、麗しく、そしてしばしば連続した動作をする。剣舞を練習しても、強くはなれないかもしれない。それでも私は今、剣舞に集中していた。

「菊花様のためだ……」

 ひとり呟けば、不思議と力が湧いてきた。今まで感じたことのない感覚だ。まるで全身に火が灯っているかのようだ。菊花様のために……そう思えば思うほど、体は動く。

 最後の一振りを終え、一度大きく深呼吸してから剣を納めた。


 不意に芝を踏みしめる音が聞こえた気がして振り向く。そこには意外な人物が佇んでいた。背が高く、短い黒髪の彼は、鋭い眼光をこちらに向けている。

睿霤ルイリョウ……?」

 その者は間違いなく、私たち武家集団のユイ家のひとり、睿霤だった。奴の白肌は青白く月光に照らされており、ただじっとこちらを見ている彼の様子は、並ぶ稽古道具に相まって不気味さを醸し出している。

「なぜここにいる?」

 私の問いかけに、彼は答えない。睿霤と会うのは一月以上ぶりで、東月ドンユエの国の侵入者を捕縛したとき以来だった。あの日、奴は私の体を壁に押し付け、顔を首元に近づけてきたから、腹に拳を一発入れてやったんだが……。それまでは嫌というほど私に絡んできていたというのに、全く姿を見せずにいたので、ここ最近の彼の動きは謎だらけだ。

「睿霤。あれから私をずっと避けていたのか? 情けないヤツだな」

 尚も黙っている睿霤に対し、私は斜に構えることにした。奴はいつも私を苛立たせるようなことを言ってくるから、先制攻撃に出てみたのだが……効果はいまいちのようだった。鼻を鳴らすだけで特に何も言ってこない。

「この前の晩餐に来なかったのも、酒盛りから逃げたからだろう。まあ、それは同情しないでもないが……!」


 その刹那、奴は動いた。咄嗟に私の体が反応する。金属同士がぶつかり合う甲高い音が響く。間一髪だった。

 睿霤が、その腰に下げる刀を抜きざまに斬りかかってきたのだ。腰の直剣を抜いて防いだものの、勢いを殺せず後退するしかなかった。手が痺れる。睿霤は私に刀を向けたまま構えていた。

 睿霤は強い。前に私が苦戦した保星パオシンよりさらに手ごわい相手だ。

 こいつは私とは三つしか歳が違わないのに、昔、手練の先輩たちを模擬戦で叩きのめしていた。彼を相手にするのは危険だ。

「睿霤! なんのつもりだ!」

「忠告はした筈だ」

「なに?」

「女子供を斬れぬ腑抜けのままでいるな。王族と深い関りを持つなと」

 確かに言われた気がする。だが納得なんてしていなかった。今、私は菊花様のために生きている。

「菊花様をお守りすることがいけないというのか?」

「お前が子守にうつつを抜かしている間に、長は動き始めているぞ」

「長が?」

「お前が何も変わらぬのなら……」

 睿霤は一歩踏み込み、刀の切っ先を視線の間にかざした。

「ここでお前を斬る」

「なっ、本気なのか!? 睿霤、何故……?」

「その方が、お前のためだ」

 淡々と答える彼に苛立ちを覚える。ただ、奴の目は真剣そのものだ。気圧されて一歩下がってしまう。

「何が私のためだ! そんな勝手な理由で私に刃を向けるのか!?」

「ああ、そうだ」

 間髪入れずに返答されたことで、怒りが頂点に達した。もう知るものか。そう思ったときにはすでに私は走り出していた。

 この儀礼用の剣には刃がついていないが、金属の棒として使うことはできる。柄を握りしめ、引いて構えた。腰だめにして突進し、渾身の力で突く……いや、ダメだ! 奴の間合いに入る前に地面を踏みしめ止まる。睿霤は姿勢を崩さない。

「どうした、腑抜けが。突いてみせぬか」

「お前の戦い方は知っている!」

「……そうか、そうか」

 奴は喉の奥で笑い声を鳴らした。ようやく奴らしい仕草を見ることができたが、別に嬉しくはない。

 相手を油断させての不意打ち。それが睿霤の戦い方だ。わざと隙があるように見せ、そこに誘い込んで仕留めるという戦法を得意としているのだ。

「私を斬るのではないのか? かかってこい、睿霤!」

「腰の引けた奴が言う台詞か。そのまま逃げるつもりか」

「うるさい……!」

 言い返しながらも、内心焦っていた。こいつに勝つのは難しいだろうと思っていたからだ。攻めれば返される。守るなら……この儀礼用の剣の強度が不安だ。軽量なぶん刀身は薄く、鍔がない。睿霤の長く重みのある刀をまともに受けられない可能性がある。

 私の目を見ながらニヤニヤと笑い始める。いつもの調子に見えるが、私の動揺を見抜いているのかもしれない。


「ならお前の望み通り、俺から攻めようか」

 そう言うなり、奴は刀を振り上げて踏み出した。速い! 振り下ろされる刀が降ろされる前に、私は後ろへ飛び退いた。風圧を感じた直後、私がいた場所に土埃が上がるのが見えた。冷や汗が流れる。

 そのまま距離を取りつつ剣を向けた。睿霤は構え直さず、振り下ろした姿勢のまま横顔を見せている。……いけない。罠だ。そう思い注視していると、奴はまたニヤリと笑ったように見えた。

「わきまえているな。良い判断だ」

「黙れ!」

 いちいち癇に障る言い方をするヤツだ。叫びながら剣を突き出す。だが簡単に弾かれてしまう。すぐに剣を回転させ、柄頭の金輪で腹部を狙う。だがこれも易々と腕で受け止められてしまった。

「小手先技ばかりだな……」

 嘲るような口調で言われる。悔しいがその通りだ。いきなり叩き伏せるような攻撃はできなかった。


 一旦引いて体勢を立て直す。その間に奴は距離を詰めてくる。

 人を嘲るように振る舞う睿霤の動きは全く読めない。守っていれば勝てるというものではないだろう。では、攻めるか。だが奴は反撃を最も得意とする男だ。こいつの間合いに迂闊に飛び込んで斬られた者を、これまで何人も見てきた。

 奴は隙がありそうに見せながら、常に万全の態勢でいるのだ。自らその状況を作って……。

 自ら作って、か。


「いくぞ、睿霤!」

 私は叫んだ。すると睿霤は一瞬呆気にとられたような顔をしたが、やがて口の端を歪めた。

 地面を蹴る。一気に詰め寄り、突きを繰り出した。さっきと同じだ。弾かれ、柄で殴ろうとするも、腕でいなされる。そのまま私は剣を内巻きに振り上げた。連撃をお見舞いすることにしたのだ。


 剣舞の動きは実戦では役に立たないと思っていた。連撃はその攻撃の数だけ反撃の危険を負うし、流れるような動きなど読まれやすいだけだと考えていたからだ。だが、今私がやっているのは、剣舞の動き。

「はっ!」

 右袈裟斬りから、右横薙ぎ、左上からの切り下ろし、そして逆袈裟へと繋げる。防がれるたびに剣を引いて振っていく。一度でも大きく弾かれればそこで終わりだが、意地でも食らいつく。

 奴は刀で防ぎながら笑っている。私がヤケになっているように見えるのか? それは違うぞ。

 睿霤は反撃の機会を窺っている筈だ。万全の態勢で返せる点を。実際、反撃はされるだろう。奴のその機会は奪えない。だが、そのとき、私の方も万全なら、どうかな?

「たあっ!」

 掛け声とともに踏み込む。剣を素早く逆手に持ち替え、下から上へと突き上げる。防がれてもいい。むしろその方がいいのだ。私の狙いは別にあるのだから。

 互いの刀身が強く擦れ、金属の摩擦音が深く鳴り響いた。滑るままに振りぬき、右に溜めてすぐに右から左からの水平斬りを放つ。素早く、思い切り近づきながら。

 睿霤はそれを当然のように防ぐ。だが直線的で速い逆手の斬撃を防ぐのだから、ここでの反撃は無いだろう。

 私はしゃがみ、その剣を下から上に振りぬく。

「やあぁっ!!」

 私は飛び上がった。硬い音が鳴り響き、その一撃は防がれたのがわかる。だが私は勢いのまま、宙を舞う。


 大技が防がれた。とうとう睿霤の反撃が来るのだ。だが、私もこのときを待っていた。空中で左手を腰だめにし、右手の剣を順手に持ち替え前に突き出す。そこから思い切り、右に体を捻っていく。

 空中で回転斬りを行うのだ。睿霤の反撃より先に。

 天と地が逆さまになるとき、右腕を振り始める。着地より先に振りぬけるようにだ。

 この一撃に、すべてを懸ける。そうだ、私は、睿霤よりも疾い!


 半回転したとき、睿霤が見えた。既に、剣を左に引き切っていた。

 しまった、斬られる。そう悟った。


 奴のお得意の反撃、か。さすがだ。

 そういえば、子供の頃、集落の子供たちで剣術遊びをしていたときにも、いたな。どう斬りかかっても全部返してくる奴が。あいつも背の高い男だったな。なんとなく睿霤に似ていた気がした。

 結局、あのときと同じように、私は斬られて終わるのか。


 菊花様の姿が、脳裏に浮かんだ。

 そうだ、私は諦めるわけにはいかないんだ。あのお方を守るためにも、ここで死ぬわけにはいかない。


 空中で体全体を屈めた。体の回転を速める。斜めに回ってもいい。着地の姿勢など考えてはいけない。全力で振りぬくんだ。睿霤よりも疾く!

 視界が横に流れる中、剣が何かを捉えた。

 睿霤の呻き声とともに手ごたえが消える。そのまま私は地面に落下。背中が叩きつけられた。息が詰まり、痛みのあまり目が潤む。それでもなんとか体を起こして顔を上げたときには、もう勝負は決していた。

 睿霤が倒れている。刃の無い剣は睿霤の頭を叩いたのだ。奴は震えながら呻いている。頭には血がにじんでいた。

 下を向いて体を確認する。どこも斬られていないようだ。

 そう、斬られていない。

「なぜだ! 睿霤!」

 私は倒れている睿霤に向かって叫んだ。納得がいかない。

「なぜ刀を止めた!!」

 奴は苦しげに呻いてばかりいる。質問に答えようとしないので、もう一度問いかけることにした。

「答えろ、どうして斬ってこなかった!」

 先程の流れる視界の中で、睿霤は動きを止めていた。睿霤よりも疾く振りぬけたと思ったのに、実際には睿霤が動いていなかっただけなのだ。私を斬ると言っておきながら、まさか、斬る気が無かったとでも言うのか?

 睿霤は呻きながらゆっくりと立ち上がった。何も答えず、息を荒げながら、ただ私の目をじっと睨みつけてきた。

「睿霤……お前も同じではないか。私に女子供を斬れない腑抜けと言いながら、お前も私を斬らなかった」

 睿霤は黙って聞いていた。私は剣の柄を握りしめ、左の拳に力を籠める。

「お前の忠告なんか聞かない! 私は菊花様を護る! この先何があろうともだ!!」

 叫びながら剣の切っ先を奴に向けた。怒りを込めて睨む。それでも、睿霤は黙ったままだった。こいつが何を考えているのか、さっぱりわからない。

「……さらばだ」

 剣を収め背を向けた。もう睿霤に用はない。


 歩いて去る私に、睿霤は何も言わなかった。私は裏庭を後にした。

 冷たい風が吹き荒れていた。木々は揺れ、枯れ葉が巻き上がっていた。

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