第3節 鑑賞

 白衣を着たカミサマは、ツゥーバを連れ、一つの歓談室にいた。

 カミサマ達の前に、大型のスクリーンがあり、そこから映し出されている人々の風景。


「カミサマ、これは何をしているのでしょうか?」

「(カミサマ?)これは、人の生活感に於いての映像だ」

「人の生活感、ですか………」


 カミサマの言葉にツゥーバは、再び視線をスクリーンへと戻す。

 そこに映る人の営み、映像が終わりを迎えると、カミサマは手も足も動かさずとも、スクリーンの映像を切り替える。


「これは、森?」

「自然だ」

「しぜん………では、これは………」

「文明だ」


 次々と切り替わるスクリーンの映像。

 ツゥーバは、次々と変わる映像に疑問を抱き、口にするとカミサマは文句も言わず、淡々と説明を続ける。


「カミサマ、何故私にこのような光景を?」

「必要だからだ」

「………必要、ですか」

「必要だ、生きるために、繁栄するために」

「そうですか」


 僅かにカミサマの言葉から、カミ、と言う存在は消え、ツゥーバに近しい存在に成る。

 いや、近しくも遠く、遠からずとも近いと言う謎の状態。

 カミとも呼べず、自身と同じとも呼べない存在にツゥーバは、胸の奥にある何かが揺れる。


(なんでしょう?)


 僅かに揺れ動く『何か』に対し、ツゥーバは小さく首を傾げる。

 だが、カミサマはそんな彼女に言葉を掛ける事は無く、何かに追われるような視線を目の前のスクリーンに向けていた。

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