病人はマラソン選手

毎日全力を尽くす

まだゴールは見えてこない

沿道には家族や友人知人の顔が見える

皆、声を揃えて声援を送ってくる。


「ガンバレ、ガンバレ」

「まだ大丈夫! 走れ走れ!」

「休まず、頑張って!」

「お前なら大丈夫」


声は届いてる 心配そうな顔も

だけど、走ってるのは私一人

誰も私を支えることは出来ない


足はもつれる しびれる れる

お腹は痛む 腰は砕ける

食べることも 飲むことも 出来ない


「ガンバレ、ガンバレ!」

「大丈夫! お前は大丈夫!」


声援はありがたい

だけど、私を助けてくれるのは私だけ

私を動かしてるのは私だけ

試合を放棄すれば もう皆の声も聞こえなくなる


辛い苦しい寂しい

まだまだゴールは見えてこない

医師は審判

道を外れて走ってないかただ見てるだけ


頑張れ、私! まだ大丈夫だ、私!

走るのは私 止めるのも私

長い長い人生のマラソンの中で

病気という名の試合の距離はとても短いはずなのに


もう少し きっとゴールはある

私は一心不乱に走るだけ

「大丈夫、大丈夫」

皆の声を背に 走るのは私 止めるのも私


見えないゴールを目指してまた走る

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