走り抜け傷心ガール

@kz_sasara

人生まだ長し、走れよ少女

上下に揺れる視界、伸縮を繰り返す膝関節

一定のペースで足にかかる体重

一歩一歩ごとに重りが体にかかる感覚

真綿で首を絞められるかのように

徐々に呼吸が苦しくなる


薄暗く、青みがかった早朝の冷風が直に火照りを沈める

ランニング用コースの端の柵

向こうには小川と薄暗い雲の塊


走る走る

前へ前へ、目的地がなくても前へ


跳ねる跳ねる、アスファルトを踏み締める

白と赤のランニングシューズ


伸ばす伸ばす、足を先へ

すれ違う犬の飼い主


力を貯めて、落下の覚悟

大地を思いっきり蹴っ飛ばす


左側の階段、その奥には薄茶色の土手

大きく膝を曲げる、全身を使って着地

そのまま猫科を思い浮かべて、クラウチング


深く息を吸う、口の奥で鉄の匂い

喉が焼けそう、胸が熱い


両腕を鞭の如く振り回す、動きを大きくする

両足は車輪のようにぶん回す


速く、もっと速く

もっと、もっと!

更に、もっと先へ!!


うあああああああああ!!


叫べるなら、叫びたかった

声にならず、ただひどく顔を歪める


やがて土手を抜けて、丘が見えてくる

全身に広がる疲労感


それでも、見つめるは丘の上

限界まで上げたスピードを、更に上げる

鼓動がまるで太鼓みたいに聞こえる


平地を抜け、坂に登る

高く、高く足を上げる

上へ、もっと上へ!


ふと身体にかかってた重みが消える

登り切った、段々と落ちていくスピード


「ばっきゃろーーーーー!!!」


叫びたかった


「何が青春だああああああ!!」


泣きたかった


「嗚呼あああああああ!!!」


もうよくわからない


「あっはははは!!」


なんか楽しくなってきた


「振りやがってぇぇ、クソがああああああああ!!」


喉の奥に詰まっていたものが吐き出された


はあ、はあ、はああああ

バタンとベンチに倒れ込む

身体の至る所に滲み出た汗があって気持ちわりぃ

はずなのに、凄くスッキリした


群青色の朝空は淡い黄色に染まっていた

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