第十三話 チートスキルキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

 『感覚共有』でサガーラちゃんの目を借り、私は自分の身体を眺めてみた。すでに『変身』のスキルを使っている。


 シャルルと同じ金髪は腰まで長く、黒目と金の瞳が人間でないことを表している。

 身体つきは結構なもので、実に女性らしいプロポーションだ。前世の私よりもだいぶ大人っぽい。


 身長はシャルルよりも小さい。というか、人間の姿になってみると、やっぱりシャルルは大きいな。クオンさんも小さくはないけど、シャルルの方がずっと大きい。


「う~ん、やっぱレベル差がありすぎて、俺の『解析』スキルじゃステータスが見えねぇな。レジーナ、悪いが今のステータスを口頭で教えてくれないか? クオンさんも、指揮官として聞いておきたいだろ?」


 ……どうやらシャルルは、私の美貌などよりもステータスが気になるみたいだ。ムカつく。


 まあ、急激に進化したし仕方ないか。

 それに、シャルルは開口一番「美しい」って言ってくれたしね。


「ええ、そうですね。ワタクシもランクAの迷宮蜂は見たことがありませんから、戦闘でどの程度の力があるのか把握しておきたいです」


 ふむふむ、あまりにレベル差があると私の『隠蔽』スキルを突破できないのか。どうやら本当に、私はこの二人よりも強くなってしまったみたいだ。


 けど、特に隠すことはない。二人は知識も豊富だし、きっと戦闘で役に立つだろう。


 私は二人に、包み隠さずすべてのステータスを伝えた。


「れ、Lv182!? 俺、Lv164って言わなかったか!?」


「まあね。ここはフェアに行こうと思って。長肢蜂のみんなからも、Lv1ずつ貰ったんだよ」


 シャルルの言いたいことはわかる。そもそも、Lv1ずつとはいえあまりレベルダウンさせるべきではないのだ。特に高レベルの眷属に対しては。


 燕蜂の平均レベルは20前後に対して、長肢蜂は30前後だ。戦力として考えるのなら、長肢蜂のレベルを減らすことは損になる。


 けど私は、自分の眷属に優劣をつけ過ぎたくない。もちろん、シャルルやクオンみたいに、特別扱いせざるを得ない存在はいる。けど、できるだけそういうのは減らしたいんだ。


 だからと言って、眷属全員のレベルを均等にするのは間違っている。だってそれは、今まで各々が努力して得た力だから。


「なるほど、フェアネスですか。素晴らしいです女王様。我々燕蜂が、古参の長肢蜂と争いにならないようにしてくださるとは。ありがとうございます」


 クオンさんは大げさだ。とても感動したようにそう言ってくれたけど、このくらいのことは女王として当然だと思う。


 というか、私はそもそもこの階級制度に納得していないのだ。生まれた時から優劣が決まっている。その人の努力なんて完全に無視して、支配する側と支配される側に分けられている。


 もちろん、それは蜂に生まれた以上仕方のないことだとは思う。けどだからこそ、せめて私のできる範囲では優劣をなくしたいと思うのだ。


「……にしても、あんまスキル多くないな。22個か。ランクAだと、30個くらいはスキル持ってるもんだと思ってたが」


 え!? これでも少ないの!? うそでしょ!


 シャルルに言われて、私も自分のステータスを確認する。


【種族:迷宮蜂 Lv182:ランクA 階級:女王蜂 レジーナ】

通常スキル:レベルアップブースト

      超加速

      変身

      解析

      隠蔽

      筋力強化

      視覚強化

      毒完全耐性

固有スキル:クリエイトダンジョン Lv4

      Queen Bee Lv4 

      アストラの承認(済)

      誘惑

      要塞強化

      巣強化

      迷宮強化

      限界突破

      処理能力拡張

      世界樹の支配者

ファミリースキル:毒創造

         毒強化

         感覚共有

         共通言語 Lv4


 そして次に、自分の視界を確認した。


(やっぱり、進化の効果は絶大だ。今こうして見ている世界は、私とシャルルでは全然違う)


 私は単眼や複眼の他に、いくつか視界を持っている。それは、『感覚共有』と『感覚譲渡』で生み出された視界だ。


 燕蜂の巣予定地に、入り口の見張り。長肢蜂の巣。それ以外にも、私の脳には複数の視界が映し出されていた。これだけでも、私の『格』というものが読み取れる。


「そうですね、確かにこれは少ない。それに、ほとんど迷宮作成に偏ったスキル構成です。直接の戦闘力はほとんどないかと」


「……いや、わからんぞクオン。もしかしたら内部数値優先の構成かもしれない。そこまでは、俺たちじゃわからないからな」


 マジですかい。私、ランクAになってもまだ弱いの?

 やっぱり女王蜂って、直接戦えない運命にあるんだなぁ。


「ん? シャルル、内部数値ってのは何?」


「ああ、ステータスには表示されないけど、身体能力を数値化したものだな。レベルが上がると、劇的に身体能力が向上したりするだろ? ホラ、エイニーみたいに」


 なるほど。エイニーちゃんもレベルアップした途端、スキルを使うまでもなく結構なスピードが出ていたね。


 つまりはゲームで言うところの、AGI《アジリティ》が上がったってことか。


「内部数値はどんなに高ランクの『解析』でも見ることはできません。これはすべて、大主神アストラ様が管理されているようです」


 また出たよ、大主神アストラ。本当に何者なんだ。


 話を聞く限り敵対することはなさそうだけど、ちょっと危険なにおいがする。


「まあそんなことは良いよ。どうせ私は戦わないし、罠が強くなればOK」


 『クリエイトダンジョン Lv4』に『要塞強化』『巣強化』『迷宮強化』。そして極めつけは『世界樹の支配者』だ。これほどダンジョン制作に適したスキル構成もないだろう。


「それより、みんな自分のステータスを確認してよ。私が進化したから、眷属のみんなにも何かあるはずだよ~」


「おお、そういえば!」


「これは失念していました」


 私がそういうと、シャルルもクオンも自分のステータスを確認し始めた。おっと、隅っこの方でサガーラちゃんもステータスを確認しているな。


【種族:迷宮蜂 Lv50:ランクC 階級:戦士 シャルル】

通常スキル:強制受精

      変身

      解析

      隠蔽

      格闘

      剣術

固有スキル:限界突破

      要塞強化

ファミリースキル:共通言語

         女王の加護


 こっそりシャルルのステータスを覗いてみたら、いくつかスキルが増えていた。

 通常スキルに『格闘』と『剣術』。あとファミリースキルに『女王の加護』?


 そういえばこの『女王の加護』ってスキル、Lv90になったエイニーちゃんにもあったよね。結局よくわかんなかったけど。


「ねぇ、この『女王の加護』ってどんなスキル?」


「ああ、それはパッシブスキルの一つだな。女王のステータスの一割を俺たちに付与する。本当なら俺たちがLv60を突破する必要があったはずだが……どうやら進化の過程で手に入れたようだな」


 なるほど、私のステータスの一割か。ってことは、みんなにはLv18分くらいステータスが上乗せされてるってこと?


 ……は!? ちょ、それってヤバくない!? つまり、シャルルは実質Lv68のステータスってこと!?


「ま、待って。私のスキルはどういう扱いなの? みんなにも効果があるのかな」


「もちろんです。例えばレジーナ様は『毒完全耐性』を持っておられますよね。つまり自分の害となる物質は体内で完全に除去できる。これが我々の場合、毒に対する弱い耐性、もしくは蜂毒の無効化となって現れるのです」


 それってつまり、もうどんな蜂が襲ってきても毒は気にしなくていい。そういうこと?


 ヤバい。これはあまりにもチートスキルだ。


「それって、『クリエイトダンジョン』とか『Queen Bee』とかも反映されるの?」


「いや、固有スキルは別だ。っていうか、『女王の加護』で反映されないから固有スキルなんだろ」


 な、なるほど。良かった。みんなが『Queen Bee』みたいなスキルを持ってたら、私やることなくなっちゃうしね。勝手に仲間作ってこられても困るし。


 あ~でも、これでできることが広がるなぁ。主に罠について。

 ぐへへ、どんな罠作っちゃろかな。やっぱ毒耐性あるなら、毒沼の罠は作るべきだよね。夢が広がりんぐ。


「レジーナ帰ってこい。君は本当に、自分の世界に入るのが大好きだよな」


 とんっとシャルルに頭を突かれ、私は現実世界に戻ってきた。

 少しムッとしてシャルルの目を見ると、彼もこちらに目線を合わせてくる。


「これで、第一目標達成だな。レジーナは立派な主になった。あとは……」


 シャルルは私の手を取り、ぐっと顔を近づける。彼の視線が熱い。


(え? もしかして今から? ここで始めちゃうの!? わ、私まだ心の準備が~!)

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