小倉A組、右回り、1200メートル、桜花レジェンドスプリント小倉

『さぁ、続々とパドックでのお披露目を行っておりますレジェンドジョッキーレース予選A組。

 果たして十八名の中から決勝に進出するのは一体誰になるのか。山田さん、注目の選手は一体誰でしょう?』


『そうですね、勿論リーディングでもトップテンに入っている幸永騎手に注目しています。投票でも一番人気でしたからね。

 しかし、オーストラリアの閃光を駆る真野騎手も曲者です。

 あとは最内の木島騎手が逃げでペースを握るでしょうから、可憐乙女ら他の前を狙う馬も次手に控えてかなりの高速戦が予測されます。聖剣は追い込み馬と言っても差し位置に待機しての勝負になるでしょうから…。

 まぁ、誰が勝ってもおかしくないですね。逆に返すと一つしくじるとほぼ確定で負けるぐらいの1200メートルになるでしょう』


『なるほど、ありがとうございます。パドック周回も終わり、返し馬に入りました。

 オーストラリアの閃光がどうやら少し機嫌が悪いようですが…』


『芝が気に入らないのかもしれませんね。フレミントンなどと比べると芝丈の長さが倍近く違いますから』


『おぉ、そのようなことまで関係してくるのですか?』


『ええ、シミュレーターとはいえ馬は生きていると考えてください。折り合い一つとっても無数の派生があると社長が言っていましたので』


『本当にすごい機械ですね』


『本当にすごいのはどこかからこんな機械引っ張ってきた社長ですよ』


『『はっはっは!』』


『そろそろ返し馬が完了しそうです。最後に真野騎手がゲート前の輪乗りに参加してグルグルと周回しながら奇数番から収まっていきます。

 7番A組で唯一の女性騎手の名古屋競馬所属の宮田騎手が入ります。

 続いて9番不破騎手、一番人気の11番幸永騎手、13番春川騎手、15番周防騎手、竜胆騎手も収まって偶数番に移ります』


『10番の寺尾騎手がちょっと喧嘩しますかね』


『10番の龍王が首を上げてます。何が気に入らないのか、制御が効かずに止む無く輪乗りに戻ります』


『落ち着いてくれるといいですね』


『12番のローレル騎手も収まり、剣持、乾、真野騎手も順調にゲートイン。寺尾騎手もなんとか落ち着かせて無事に…、収まりました。

 レジェンドジョッキーレース、小倉1200! ゲートが開いた!

 可憐乙女ロケットスタート! ゲートの開放と共に先頭に躍り出る! 続いて木島が駆る驀進王が続き、その後ろは互いに譲らずに順番が入れ替わり立ち代わりだ! そこから少し空き一流の血統が控える! 最後方には聖剣二頭が並ぶが危機感からかかなり前目につけている! 小倉競馬の1200は全体的に下り坂、ハイスピードの馬場を制するのは誰か!

 さぁ、バックストレッチから三コーナーを回って先頭は変わらずに可憐乙女! 時計が速い! この高速馬場は誰を勝者に導くのか! 四コーナーまでのスパイラルカーブも一切スピードが衰えずに最終直線へ!

 あがるあがるあがってくる! 後方から聖剣たちが強襲! 一流血統は先行馬に詰まって前に出ることができない! オーストラリアの閃光も追い鞭で加速した! 速い速い! なんという背比べ! なんという背比べ!! 追い越し追い抜き! あと100メートル! ほとんど差がない! 可憐乙女逃げ切れるか! 木島驀進王! 閃光! 三頭の龍王が差し迫る! 凄い! 凄すぎるぞ! 聖剣ローレルも並んだ! 全頭整列横並び! これは恐ろしい! 七頭並んでゴールイン! 初戦からデッドヒート! 前代未聞の七頭写真判定! 山田さん! 一体誰が頭だと思いますか?』


『そうですね、わかりません!』


『『はっはっは!』』


『時計は一分と六秒ジャストです。レコードに迫る記録ですね。流石名馬たちの面目躍如といったところでしょうか。あっ、結果が出ました!

 木島、宮田、ローレル! 1、7、12です!』


『凄いですねぇ、七着まで全部ハナ差ですよ』


『馬群全体で見ても頭から後ろまで二馬身もない結果となりました。短距離とはいえ次のレースも楽しみですね!』


『まったくですね! 次はガルフストリームの1800ですから日本では見たこともない戦いになるでしょう! あっ、それではカメラを配信スタジオにお返しします!』


『B組は十三時の発走です。それでは後ほど!』



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