第3話 違法金属密輸グループを追え!①

 ―同時刻・二国ヶ丘高校校門前―


 竜理が、交番の職員に声をかけられていた頃、彼女のクラスメイトの一人である【佐々木ささきつばさ】(17歳・高校2年生)と、彼の友人であり、クラスメイトでもある【長崎ながさき虎信こしん】(17歳・高校2年生)の二人が、話をしていた。


 「今日の授業、なかなか良かったよな。」


 「日本史やろ?あれは良かった。」


 「しかし、見方によってはどちらが善か、どちらが悪か、変わるんだよな。」


 「だいぶ昔は・・・たしか平成時代だっけ?蘇我氏がかなり、悪者扱いされてたんだよな?」


 「そっ!それでも平成時代の途中から、蘇我氏が本当に悪なのか、歴史学者からも疑問の声が出始めたみたいだしね。」


 「まあ、内容によっては色々変わるのさ。」


 「なあ、もしかしたらあれ・・も、変わるかな。」


 「佐々木?」


 「あ、すまんすまん!」


 「もう気にすんな!あれ・・はお前が悪いんちゃうから!」


 「ああ、ありがとう・・・」


 二人は日本史で習った歴史の話をしていたが、会話のある部分・・に触れた途端、佐々木は何か意味深な発言をしたのである。佐々木の過去に何かがあったようで、友人である長崎も、その事・・・を知っているようだ。



 ―東大阪市内・交番―


 その頃、職員に呼ばれた竜理は、戸惑いを見せていた。


 「急に声をかけて、ごめんね!」


 「い、いえ・・・大丈夫です!」


 「君、結構東大阪に来ているよね?」


 「は、はい!」


 「土地勘はあるかい?」


 「あ、あります!」


 「じゃあ、お願いがあるんだ!時間があるときでいいから、調べてほしいことがあるんだ!」


 「調べてほしいこと・・・ですか?」


 「ああ!その前に自己紹介だ!僕は【石澤いしざわ昭光あきみつ】という。よろしく!」


 「私は上条竜理です!こちらこそよろしくお願いします!」


 「上条・・・!?」


 「?」


 「ああ、なんでもない!ごめん!それで君に頼みたいのは・・・」


 「はい。」


 「“違法金属・・・・密輸団体のアジトの場所の把握”!!」


 「ちょ、ちょっとまで待ってください!?」


 職員の石澤昭光(36歳・警察官)に、竜理は認知されていたようで、土地勘があることを知るやいなや、違法金属密輸団体のアジトを探すようにお願いしてきたのだ。もちろん、竜理は依頼を受けるどころか、突然の大きな依頼に戸惑うしかなかったのである。


 「いや、あくまで君は、この街に来たときに、ついでに調べてくれたらでいいし、東大阪で別の用事があるなら、そっちを優先してくれても良いから。」


 「・・・」


 「ほんとに嫌になっちゃうよ。昭和、平成時代に東大阪には町工場がたくさんあって、特にネジがたくさん生産、加工された歴史のある街なんだ。そして近代金属・・・・の生産が、近年・・・とは言っても、何百年も前から栄え始めて、古代のような街に戻りつつあったのに、違法金属が出回るようになって、密輸するという重罪を犯す連中まで増えてきた。」


 「違法金属が・・・」


 「違法金属が、世界各地に出回れば、金属の在り方が問われかねない。早く、密輸グループが増加する前に、本元から根絶やしにしなければならない!」


 「・・・それなら、私も毎日ではありませんが、協力します!」


 「ありがとう!感謝してる!」


 「力になれるかは分かりませんが・・・何か協力ができたら・・・」


 「いや、一人でも君みたいな人がいれば、助かる!!」


 戸惑う竜理ではあったが、東大阪市の歴史を知り、石澤の密輸グループ摘発に、少しでも協力したいという気持ちになったようだ。



 ―翌日・東大阪市内―


 市内の商店街の途中にある巨大なゴミ箱があり、蓋が開くと、中から竜理が出てきたのである。


 「う〜ん、ちょっと臭うわあ。この辺に怪しい人はいないかしら?」


 この日は、学校が休みで、時間があったので、密輸グループを探していた竜理。しかし、そんな都合よく見つかるはずはなかったのである。


 「昼から佐々木くんや市川くんらと用事があるから、ちょっとここで終わりにしようかな。」


 昼から、クラスメイトと遊びに行くため、ここでこの日は切り上げようとした竜理。しかし、商店街に若い二人組の男性が歩いていたのである。竜理は二人の雰囲気に何かを感じたのか、すぐさまゴミ箱内に隠れてから、少し蓋を開けて二人組の話を聞くのであった。


 「おい、アングリーサン・・・・・・・は、どこへ送るんだ?」


 「あれは、ヨーロッパ!」


 「報酬はいくらだ?」


 「分からんけど、少なくとも家一軒建つらしい。」


 「いいね〜!!」


 「(あの人達の会話・・・何か気になるわね?アングリーサンってなんだろう?ちょっとついていってみようかな。)」


 竜理は、二人の後ろをついていくことにしたのである。この後、竜理の身に何が起こるのか、彼女は知る由もない・・・!



 【第3話・完】

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