キラキラ業界物というよりワナビのリアル物で、生々しくも爽やかでした。

最後まで読んで応援コメント欄を拝見したところ、作者様が「小さな劇団出身で声優事務所に入った経歴がある」と書いていらしたので納得。という業界にお詳しそうな作品でした。

キラキラ業界モノというよりはヒューマンドラマで、リアル寄り、心情重視、センチメンタルです。

声優のお仕事をしますが、そこはあんまり詳細にドラマを描いていなくて、ぬるっと成功してます。役に苦労するとかダメ出しが続くとか声優モノあるあるがなく、主人公の特徴として割と普通に喋ってるだけでイケるというのが現代の風を感じました。

主人公の性格も「夢を目指して頑張るぞ!」系ではなくて、役を取るために必死になったり取れて大喜び!みたいな感じではなく、割と「仕事が取れたから生きていける」という生活の生々しい感じがあり。
そもそも論、なんか他者に「華があるから」と引っ張り込まれてついてって劇団とか入っててもう他につぶしがきかないんだ、ってなってるというのが書いてあるんですね。

これってめっちゃリアルやなと思って。
創作系も芸能系も、外から見ると夢にキラキラして情熱的に「頑張るぞー!」な世界に思えるのですが、中は日の目が当たって食べていけるのはほんの一握りで。
夢見るワナビに希望を持たせ、「才能ある」とか「頑張ったらいける」という甘い言葉をエサにセミナー売りつけたり、何年も人生の大事な時間を注ぎ込ませて後戻りできなくさせて囲い込むようなのが世の中フツーにあるわけです。

主人公は仕事を獲得してなんとか生きていける。というのをめちゃしみじみ書いてて、それがずっと生きる限り続くんですよね。
なのでメンタルも病みやすい。
そんな世界であり、病んでる身内もいる。
頑張ってたのにメンタル動揺させて事故った人もいて、入院して、でもメンタル動揺したのは自己責任、みたいに言われる。
自分は商品であり、何がきっかけで売れるようになるかわからないし、突然何があってダメになるかもわからない。今はなんとかなって生きていけそうだけど一寸先は闇。

そういう気配が作中にあったので、あー、リアルだなってなりました。

そんな主人公は成長して迎えるラストには希望があり、爽やかです。これはエンタメ性もあり、メッセージ性もあり、良いなと思いました。

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