人も獣もみんな仲良く!

本作最大の魅力は、なんといっても明るくてポジティブなヒロイン、杏葉ですね。旅行に送り出した両親を不慮の事故で亡くしたり、大学の交換留学生制度の推薦を、明らかに私情がはたらいてる教授の判断でもらえなかったり。家族想いで清く正しく生きていてもこの不条理な出来事の数々。私だったらひねくれてしまうところです。

わけもわからず異世界へ飛ばされる杏葉ですが、疑心暗鬼になることもなく、タヌキから助けてくれたダンやジャスパーとすぐに打ちとけて……と思っていたら、まさかのダンから「娘にならないか?」勧誘。杏葉の根が真っ直ぐだから、ダンも助けずにはいられなくなったんでしょうね。

運命のめぐり合わせで、ダンたちとともに獣人の国へ向かうことになった杏葉。そこで出会う銀狼騎士ガウルと猫獣人リリなど、本来人間とは対立しているキャラクターたちもいいひとばかりでした。人間だからといって問答無用で危害を加えることをよしとしないガウルは、知性と誇りをあわせ持っていて、そりゃあ杏葉もひとめぼれするよな……と納得。

ダンやジャスパーたちは言葉こそ通じませんが、杏葉の橋渡しもあって、ガウルたちと徐々に打ちとけていく様子がいいですね。命を捨てる覚悟で国を出たふたりに、希望の光が射すことを願ってやみません。

獣人国の怖い怖い宰相に目をつけられてしまい、騎士団長を辞めさせられてしまったガウルですが、悲観することなく杏葉たちに用心棒の仕事依頼を持ちかける展開は心がおどりました。無自覚な杏葉に振り回されているガウル。ふたりの恋路にも注目です。

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