少女
第18話 神社
町を照らすのは月明りと街灯の光だけになった頃、僕たちは神社に居た。
空一面に満遍なく散りばめられた小さな星に照らされて、ただぼーとする。
「いつまで続くのかなぁ。」
静まり返った暗闇に一人の言葉が響いた。
その言葉は空間だけでなく、皆の心にも響いたと思う。
「僕たちが生き残った理由は何なんだろう。」
「さぁな。運が良かったんだろう。生きたい子でも殺されたんだから。」
僕たちの間では僕たちの会話をかき消すように虫が鳴いていた。
澄んだ空気までも拒む異様な空気が僕らだけではなく、この町までもを包み込んでいた。
「何か探してみる?もしかしたら何かあるかもしれないし。」
そう言って健一さんは持っている懐中電灯で足元を照らし、歩き出した。
「なるべく光りは使わないように。使っていいのは足元を照らす時と草むらなんかを探す時のみだ。絶対に町の方には向けるな。監視されていないとは限らない。」
「わかりました。」
何もないであろう足元を見る彼の姿は異様な空気をまた澄んだ空気に戻してくれたような気がした。
「中に入れたらいいんだけどね……。」
「運よく鍵が開いてるとかないかな。」
「流石にそんな運のいいことあるわけ……。」
その一言を機に全員が目を合わせた。
神社、倉庫、事務所を全員で確認してみる。
すると事務所の扉が運良く開いていた。
事務所らしきところの中は広く、有力情報になりそうなものがたくさんあった。
「七月二十日。担当:佐藤。今日は田所さんに怒られました~。儀式に使うらしい物を触っちゃてさぁ。壊れたら危ないものらしいんだよね。」
「七月二十一日。担当:渡辺。佐藤君、怒られてるのマジ笑った。田所さんも怒りすぎですよ!ちゃんと佐藤君に謝ってくださいね!」
「七月二十二日。担当:田所さん、ごめんなさい。あれは怒りすぎました。何も知らなかったんですもんね。仕方ないですのにね。でもあれはこれから先もう触らないでほしい。壊してしまったら絶対駄目なんです。」
儀式に使うものが壊れたから呪いが降り注いだ?ではその物は倉庫にあるということか。
しかし鍵がかかっていて開かない。
明日田所さんが来るだろうからそれまで待つしかないのだろうか。
そうしたら今度は見つかる可能性が高くなってしまう。
一体どうすればいいのだろうか。
その後も皆はいろいろな有力情報を集めたらしく、情報を整理するために一回家に帰った。
神社に出る前に気になることがあった。
玲音君と加奈子ちゃんの間に明らかな壁ができているように感じたのだ。
彼女は普通にしているけれど、いつも凛として堂々としている彼が少し視線を下に向けているということに違和感を感じた。
二人は一緒に行動はしていなかったし、これがただの勘違いだといいのだが。
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