第50話 放たれる凶獣

「そっくりだと? その番号はどういう意味だ」


 ゼノが陰湿な笑みを浮かべてブラウズの質問に答える。


「どういう訳か十数年前に逃げられたのだ。……子を宿したのか。人工生命体ホムンクルスの99032が。そんなことがあり得るのか! これはいい成果を得られた!」

「それがアンジェリカだと言うのか。もしそうなら、俺はお前を許すことはできない!」


「どう許さないというのだ。教えてくれないか?」

「ゼノ、お前はすぐに後悔する事になる!」


 ゼノはブラウズを挑発ると、近くの棺が割れて紫色の小鬼ゴブリンが襲い掛かってきた。

 剣を抜くと、ブラウズが素早く3体を斬っている。

 この辺りは狭い上に棺から出た紫色の小鬼ゴブリンの数が多い。

 君はシェルを庇いながら両手に意識を集中しつつ、痛みと高揚感に耐えながらゴブリンを砂に還して行った。

 シェルは後ろから、確実に狙える紫色の小鬼ゴブリンに矢を放って倒している。


 君が戦っているとゼノの声が聞こえた。

 

「そこにいたのか、願いの種オリジン! さあ、早く戻ってくるのだ」


 君は首を振ると、自分の名を伝えた。


「お前は願いの種オリジンだ。いいから戻れ。戻るんだ」


 紫色の小鬼ゴブリンを止めるように伝えた。


「行ってはいけません、アッシュ」


 シェルはゼノに向かって矢を放つ。

 だが、それはアリアによって防がれてしまった。


 透明な棺から出たアリアは目は怒りに満ちていて、口から牙向いている。

 美しい容姿のはずが、逆に不気味に見えてしまっている。

 そして、皮膚は所々に剝けていて今にも崩れそうな姿だった。

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