第38話 一瞬の油断をつく

 巨大なドラゴンに立ち向かう事を決めると、シェルに矢の攻撃を頼んだ。


「なるべく邪魔できるように目を集中して狙います。お父様を助けてください、アッシュ」


 君は頷くとドラゴンを見る。


 息を吸い込んだドラゴンが吐き出すものは炎で間違いないだろう。

 ブラウズの攻撃で止められるのかも分からない。

 それでも君はドラゴンが炎を吐く前にどうにかしなければならない。


 ブラウズは既にドラゴンの腹の前で剣を構えている。

 大男の腕をへし折った力を思い出し、手と足に向けて力を込めた。

 力が行き渡る痛みを感じて、次の動作のタイミングを計る。


「おおおお! 効いてくれよ、全力の一撃だ!」


 ブラウズの雄叫びと同時に、激しく打ち付ける剣撃の音が響きた。

 これにはドラゴンも吸い込み中の息が止まった。


 そして、君は力を開放する。

 雷すら追い抜くような速さで、ブラウスの肩に飛び乗り高く飛んだ。

 お腹を庇うように前に出されているドラゴンの手に飛び乗り、腕、肩へと素早く移動し、その喉元を捕らえる。

 

 ドラゴンが君を捕らえるが、シェルから放たれた矢によって目が一瞬閉じた。

 この好機を君は逃すことなく、喉元へ飛び込みその右手で引っ掻くようして触れる。

 バチッと音がすると、制御を失った炎がドラゴン自身の顔面を焼き、火だるま状態となって悶え苦しんでいる。


「町を壊した報いだ、悪く思うなよ!!」


 ブラウズが再び放つ渾身の一撃が寸分のずれもなく同じ場所に放たれる。

 先程の弾いた音が嘘のようにドラゴンの硬い腹の皮膚が切り裂れた。

 咆哮を上げながら倒れるドラゴンは砂のように崩れ、風に流されて消えた。


「やったぞ!! アッシュ、シェル! 二人ともよくやった!!」


 ブラウズの喜びの声が町中に響き渡る。

 君たちは、あの巨大なドラゴンを倒したのだ。

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