第27話 信じる者への返答
返答をするために、君は一旦落ち着くことにする。
急いでいるのならばマリアのほうが必死になるはずだ。
マリアの話をそのまま受け取ると、慈悲……なのだろうか。
魔物となった人の罪を人の手で摘み取る。正しい様にも思えるけど本当にそうなのだろうか。
君には判断ができないため、分からないと答える。
「アッシュはそう答えると思ったわ。神は『信じる』、罪を赦す機会に対しては『神の慈悲』と答えるのが普通なの。でも、アッシュは許してあげる。だってあなたは
神に対する思いを君に伝えた事で満足したのかマリアは立ち上がり、ドアに手をかける。
「神のお言葉は伝えたから、これで失礼するの」
マリアはそのまま家の外に出ると日が落ちて間もない夜空を見上げる。
「とても大きな収穫だったの。ああ、神のお言葉を頂く事すらおこがましいはずなのに、どうしてこの身に余る慈悲を与えて下さるのでしょうか」
うっとりとした顔でマリアは歌うように口にすると、人に注意される。
「シスターとお見受けするが、夜は危ないよ。いつ魔物が現れるか分からない。早く教会に戻りなさい」
声をかけてきた男は白衣を着ており、陰鬱な雰囲気を纏っていた。
だが、マリアは気にしなかった。
何故なら彼女は神に愛されていると信じているから。
「あら、そんなに夜は危険でしたの。ご忠告、痛み入りますの。まったく、人の罪とは業が深いものですわ」
「同感だ。忠告はした、ではな」
そう男は言葉を残して、暗くなった夜の大通りに消えて行った。
マリアはその男の後ろ姿を見えなくなるまで見続けていた。
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