第2話 男の親切

 目を覚ますと君はベッドの上で寝ていたようだ。

 意識がはっきりするまでじっとしていることにする。

 君はどうして寝ているの思い出そうとすると、男が部屋に入ってきた。


「目が覚めたようだな。君は何者なんだ? どこからやってきた? どうしてそんなに痩せ細っている?」


 矢継ぎ早の質問に君は力なく首を振る。

 思い出そうとしても頭の中が真っ白で思い出せずにいた。


「そうか、何も覚えていないんだな」


 君は頷くと、いい匂いがすることに気付いた。

 男はスープを持ってきていた。


「このスープでも飲んで少しでもお腹を満たしておきなさい。思い出したら俺に教えてくれ。何か力になれるかもしれないからな」


 君はスープを受け取り、思い出したら話すことを約束する。

 手にしたスープを口に含むと喉に流し込んだ。

 染み渡るような美味しさが、喉元を通り腹の中へと流れていく。


 それは空腹を埋めると同時に何より温かかった。

 自然と君の目から涙が流れる。


 悲しかったのではない。

 見ず知らずの君に対して親切にしてくれている、この男の優しさを感じたからだ。


「ほら、まだ沢山あるからゆっくり飲むといい」


 男の言われるままに君は1度だけおかわりをもらう。

 空腹ではあったが、それだけで腹は満たされた。

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