想像を超えるスケールの大きさで描く「以仁王の乱」

 平清盛の専横に憤った以仁王と源頼政(源三位頼政)は兵を挙げた。挙兵は失敗するが、その「以仁王の令旨」は全国の源氏(清和源氏)に伝えられ、やがて…という流れは、日本史の教科書などにも載っていると思います。

 しかし、その事情を伝える『平家物語』の記述が信用できないとしたら、なぜ頼政が以仁王の挙兵に「つきあった」のかがわからなくなってしまいます。
 頼政は、平清盛政権の下で、清和源氏としては破格の三位を与えられ、厚遇されていたはずなのに、なぜ挙兵したのか?

 頼政は、また、宮中の怪物「ぬえ」を退治したという伝説でも知られています。
 また、平清盛は、東アジアで国際的に通用していた「宋銭」の日本への導入を図ったことで知られています(なお、当時の宋は、華北をジュシェン人(漢字表記は女真、女直)の金王朝に奪われていましたが、海上交易では非常に大きな存在感を持っていました)。

 この小説は、その「ぬえ」と「宋銭」を通して、ただでさえスケールの大きな日本史上の大事件「治承寿永の乱」の背後に、さらに破格の大きなスケールの物語を描き出します。

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