第20話 明日って、用事ある? 私と一緒に遊ばない?
それは、実妹の友奈の裸エプロン姿である。
最初のうちは、疲れによって、ただ、そう見えていると思ったのだが、本当に裸エプロンだった。
そんなエッチ気味な妹から昨日、夕食であ~んをしてもらったのである。
実妹からのエッチ気味な言い寄られなんて、あまり考えたくない。
昔と比べて仲は良くなった方だが、友奈と付き合うことに関しては望んでいないのだ。
この頃、友奈の様子がおかしいとか、そう感じることは多かった。
まさか……友奈が好意を寄せているのか?
いや、そんなことはさすがに……。
そう思いたいのも山々なのだが、昨日の妹の言動を思い返すと、そう思わざるを得ない態度が目立つのだ。
妹とは、今の関係を維持したい。
普通でいいのだ。兄妹だからこそ、普通の間柄でいたいと強く思うのだった。
浩紀はそんなことを悩み、午後の授業に集中することができず、頭を抱え込んでばかり。
「おい、春風。授業をちゃんと聞いてるか?」
「……⁉ す、すいません……」
授業中、黒板前近くにいる先生から指摘をされてしまう。
変なところで忠告を受けたことで、浩紀は今、クラス内で注目の的になっていた。
浩紀は気まずさを感じたことで、いつも通りに真面目に取り組もうと思う。
だから、気分を入れ替え、授業に集中しなおすのだった。
本日、最後の授業が終わる。
大半の人らは席を立ち、帰宅や放課後の部活のために準備をしていた。
浩紀も帰ろうと思い、席から立ち上がる。
通学用のリュックに必要なモノだけを詰め込んでいると、女の子から声をかけられた。
視線を向けた先には、少々俯きがちで、頬を軽く赤く染めた
「どうしたの?」
「ちょっと話しておきたいことがあって、今から時間ある?」
夢は浩紀がいる机近くへと近づいてくる。
「いや、部活があるし。そこまで時間は取れないけど」
「そうだよね……だよね、部活をやるって言ってたものね」
夢は少々恥ずかしそうに頬を紅潮させたのち、浩紀の方へと再び視線を向ける。
「あのね。私が、バイトをしているのは知ってるよね?」
「うん。というか、バイトの面接大丈夫だったんだね」
「そうだよ」
「よかったじゃん」
「それはそうなんだけど。この前、私言ったでしょ。バイトをしたら、奢ってあげるって。だから、時間がある時でもいいから。来てくれないかな?」
「いいけど」
浩紀は承諾するように返答する。
現在進行形で、夢から積極的に誘われているのだ。
ここで断るというのは、ありえない。
潔く受け入れるのが正しい判断だろう。
「二人とも何について、会話してんの?」
気軽に話に混ざってきたのは、友人の亮仁真司だった。
「もしかして、俺がこの前、紹介したバイトの件?」
「そうだよ。あのお店、結構いいよね」
真司が絡んできたことで、夢の視線は彼へと向けられたのだ。
「だろ。それにさ、店長が言ってたけど。夢に入ってもらってよかったってさ」
「本当に?」
「ああ」
真司の話を聞くたびに、夢の表情が明るくなっていく。
二人は楽し気にやり取りを続けているのだ。
浩紀は二人の話を聞いているだけで、それ以上、割り込んで話すことはしなかった。
本音でいえば、もう少し夢とは会話したい。
けど、今は真司と会話に花を咲かせており、場違いな気がした。
そもそも、部活の時間まで、そんなに余裕がないのだ。
だから、浩紀は、明日そのお店に行くからと簡単に言い、教室を後にしたのである。
浩紀は駆け足で学校の廊下を走り、プールがある場所まで向かう。
現地に到着した頃には、浩紀は更衣室で水着に着替えた後、プールサイドへと移動した。
そこには、いつも通りに夏芽先輩がプールで泳いでいたのである。
「ねえ、浩紀も早く泳ご。今日から本格的に泳いでもらうからね」
「そういえばさ、浩紀って、明日時間ある?」
「明日ですか?」
「ええ。ちょっとね、別のところでも練習したいなって思って」
「でも、明日はちょっとやることがあるので」
「えー、予約済み?」
「はい」
「もうー、地元のプール施設で泳いだ後、その近くにあるお店で一緒に食事しようかなって思ってたのになぁ」
先輩は不満げな顔を浮かべながら、プールから上がった。
「そういうことなんですね。でしたら、一応、俺が行きたいお店があるので、そこに行くなら別のところでの練習でもいいですけど」
「ほんと?」
「はい」
「じゃあ、約束ね」
対面上に佇む夏芽先輩は笑顔を見せ、小指を差し出してくる。
「約束の指切りだから」
浩紀もそれに応じるように夏芽先輩と、しっかりと約束を交わすのだった。
「じゃ、さっそく今日の練習に取り掛かるからね。今日は二十五メートルのプールを往復三回ほど泳いだから終わりにしよ」
「それで終わりですか?」
「そうだよ。浩紀、結構疲れてるでしょ?」
「な、なんでそれを?」
「だって、昨日の放課後からちょっと元気がなかったじゃない」
「……よくわかりましたね」
「そういうのわかるから、私を舐めてもらっては困るわ。来月には大会もあるし、部員の体調のことも把握していないとね」
先輩は浩紀に顔を近づけてくる。そして、元気づけるためか、軽く右頬にキスをしてきたのだ。
「じゃ、私、もう一回泳いでくるね♡」
夏芽先輩はプールに飛び込み。その水しぶきが、少々浩紀の体にかかる。ただ、浩紀は先輩の誘惑的な行為にドキッとし、少しばかり体がフリーズしたままになってしまうのだった。
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