エピローグ

第45話 やはり、ハゲとは分かり合えない……


 猫耳ハゲ巨人の活躍から、二日がっていた。

 これ以上の面倒事は、政府も処理できないのだろう。


 現政権は――未成年がやったこと――という建前で回避するつもりのようだ。

 よって、政府からの追及もなく、海外からの強引な接触もなかった。


 やはり、宇宙人であるヴィオと『婚約をしている』という影響が大きいのかもしれない。現状では――宇宙人ヴィオに手を出すことは――得策ではないからだ。


 勿論もちろん、中にはそれが分からない強硬派もいるだろう。

 油断はできない状況だが、必要以上にビクビクする必要もないはずだ。


 日本で『猫耳ハゲ巨人が出た!』と騒ぎになっても――これだから日本人はHAHAHA!――という反応にしか、ならいないようだ。


 有名な映像製作会社辺りに問い合わせが殺到しているかもしれない。

 ネット上ではただの迷惑行為であり、事件としてはあつかわれていないようだ。


 これも学園の皆が頑張って、被害を最小限に食い止めたお陰だろう。

 ただ、街には人が増えた気がする。


 公安や海外のスパイがまぎれ込んでいるのだろうか?

 だとしても、牽制けんせいし合ってくれている内は、逆に安全と言えた。


 しかし、早々に手を打つ必要があることには変わりない。


「ご主人、どうしたっスか?」


 足元でアニメ声を出すミカン。世界で起こっている状況を両親のもとに伝えているそうなのだが、主に『俺の近況』を知らせているのだろう。


 俺とヴィオたちの状況を聞いて、楽しんでいるに違いない。

 そういう両親だ。


「地球が消滅するまで、一年もないな……」


 と思ってな――そう答えると、俺は翠が映っているディスプレイへと向かう。

 未だ俺の寝台ベッドの上で騒いでいる三人に対しては、静かにするように告げた。


 例え地球が滅ぶとしても、それまでは日常が続き、将来のことも考えなければならない。


 日本を救った俺たちだが、誰に感謝されることもなく、学園へはいつも通り登校している。


 ただ、変わったこともあった。

 その一つに『翠と連絡を密に取り合うようになったこと』が挙げられる。


 電話やメールの遣り取りでもいいと思うのだが『俺の顔を見ないと安心できない』と言うので、こうして付き合っているワケだ。


 学園で話せばいいような気もするが、一部の生徒はうるささそうだ。俺たちはゲームの方針や確認、学園の行事について、今日の予定など、他愛もないことを話す。


 そんなことで、彼女の表情がコロコロと変るのが面白かった。凛とした印象イメージから、もう少し『お堅い性格だ』と思っていたのだが、普通の女の子である。


「兄さんの前だけよ、きっと……」

「兄者はもう少し、女心を学ぶべき……」


 黙って様子を見ていた茜と葵に苦言をていされる。

 しっかりした妹たちだ。


「俺はただ、翠が可愛いと思っただけなんだが……」


 いや、元から可愛いけど――そんな言い訳をする。

 すると二人は、冷ややかな目で俺を見詰めてきた。


 一方で――おかしいな、今日は暑いな――と翠。

 顔を赤くして、手を団扇うちわ代わりにして、パタパタと顔を扇いだ。


「熱があるですニャ」


 とはミントだ。翠の膝の上から、ひょっこりと顔を出す。

 そんな毛玉を膝の上に乗せているから、熱いのではないだろうか?


「大丈夫か? お前がそばにいてくれないと困る」


 ヴィオの面倒を俺一人で見るのは無理があった。

 しかし、彼女はなにか勘違いをしたようで、


「くっ、今日はわたしの負けのようだ!」


 そんなことを言って、視線をらしてしまう。


「いつものことですニャ」


 とはミント――バイバイニャ――と言って通信を切ってしまった。


「勝手なっスねぇ~」


 とミカン。こいつら、やっぱり姉妹だ。

 俺は駄猫ミカン共々、女性陣を部屋から追い出す。


 そして、早々に着替えると顔洗ってトイレを済ませた。

 女子と一緒に暮らしていると、何事なにごとも素早く行動しなくてはいけない。


 うらやましいと言われるが、気を遣うことの方が多い気がする。


(言っても信じないのだろうけど……)


 そんな面倒な学園の連中だが、彼らも相変わらずのようだった。

 情報複製体データクローンが消滅してしまったため、彼らにあの時の記憶はない。


 だが、概要は説明している。

 四天王の株は上がり、ハゲたちにも新たな目的ができたようだ。


 なぜか『打倒、玄夢!』などとほざいている。


(やはり、ハゲとは分かり合えない……)

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