目を隠し全てを見つめる君によせて

波ノ音流斗

目を隠し全てを見つめる君によせて

 そこに確かに、憧れがあった。



 君は間違いなく手の届かない壇上に立ち。


 君は間違いなくそこで歌を歌っていた。



 時にがなり、時に語り聞かせる。


 歌は確かにそこに響き、リズムを刻む重低音は鼓動より体に響いた。



 私が君の曲を同級生に教えてもらった中学の時。


 その曲はじわりと、かつ確実に私を融解させ。


 それは私の記憶に確実に響き染み込んだ。



 それを日常の雑念に汚され、


 気がついたら埃を被り視界から消えかけつつ。




 それを今日、突然叩き起こされ、


 鮮烈な記憶と君の歌声は共鳴し、数倍に膨れ上がり。


 やがて目の前の全てがぼやけて溶けていた。




 その場の人々が、一重に君に憧れを持ち、君の曲に酔いしれる、打たれる。


 やがて音楽に合わせて体が揺すり動かされる。




 そこには確かに、憧れがあった。

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目を隠し全てを見つめる君によせて 波ノ音流斗 @ainekraine

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