第3話  魔族の巣にいたお人形

 風の親分に姿を消してもらって、アルゲイ族の巣に突っ込んで行った。

 巣は、まぁまぁの高さの木の上にあった。さすがに有翼種のアルゲイ族だ。

 木の上に巣を作っている。

 マークウェルは、風の精霊を持っているので、苦も無く巣に入っていけた。


 巣に入って行くと、火の女王に巣を焼き払わせた。

 ディン族なら堪らないだろうが、アルゲイ族は、驚いていただけだった。

 マークウェルは、姿を隠したまま一匹ずつアルゲイ族の首を撥ねていく。

 最後の魔族を倒すと、火の女王のレディに巣ごと焼きはらう事を命じた。


『ブ…… ブリの……』


「誰かいるのか?」


 マークウェルは、火を消した。

 魔族の巣は、中心部の大広間で好き勝手出来るような、作りになっていた。

 そこに倒した、アルゲイ族が転がっていた。

 魔族でも、人間の様なアンティークの家具を揃えていた。

 マークウェルは、アンバランスさに笑ってしまった。


(それより声の主だ)


 マークウェルは、声を主を探した。

 小さな女の子の声だった。


 でも、そんな子はいない。


(魔族の子供が隠れていたのか?)


『ブリはここ』


 声のする方を振り向くと、すすをかぶった人形が棚の上に飾ってあった。

 反対側の棚に、綺麗な虹色に輝く小さな、玉が飾ってある。


「人形が喋ってるのか!?」


『ブリは、竜なの。あそこにブリの心臓があるの』


 人形は、手を上げて虹色の玉を指差した。

 マークは?である。


(竜?何だ?それ?)


「これか!?」


『そう!!ブリの心臓!!』


 竜の小さな少女は、嬉しそうに虹色の玉をマークウェルから受け取った。


そして、次の瞬間、人形に見えていた可愛い女の子は、人間の五歳位の幼児に変化したのである。


愛らしい笑顔で、マークウェルの足元に巻きつき、『勇者サマ、シュキ』

と言われたが、マークウェルは足に鋭い痛みを覚えた。


見れば冒険者用のズボンが焼き爛れて自分も火傷を負っていた。


「お前は火竜か!?」


『ウン、ソウ』


話す度に炎が飛んでくるのは堪らない。


「心臓を取り戻して、お前は自由なんだ、何処へでも行けよ」


マークウェルは、困って手をひれひれさせて、向こうに行くように促したが、ブリジットは、困ったように余計にマークウェルに寄って来た。


『ブリ、シラナイ、勇者サマ、ト、イッショ、イク』


と、この状態で、一人と一匹は今いっしょにいるのである。

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