第8話  アドリアン・ロイル

 ブリジットが火竜と知れて大騒ぎになっている時に、マークウェルは、アルテアの城壁の外の街の郊外にある一番高い木の上で、うたた寝をしていた。

 もちろん、世間の大騒ぎを知るよしもない。


 そんな、マークウェルのもとに、鼻に銀色の葉っぱでくすぐる男が来た。


 マークウェルは、鼻がくすぐったくて思い切りくしゃみをした。

 一緒に寝ていたブリジットも起きるくらいデカイくしゃみだ。


「誰だ!?気持ちよう寝てるのに!!」


『はひ!?』


 ブリジットは、思い切り火を吐きながら、あくびをした。

 銀色の葉っぱを持っていた男は、驚いた。


「マークウェル、本当に火竜と一緒だったのか?」


 マークウェルは、その声の主を知っていた。

 冒険者ギルドで何度か、顔を会わせている。

 神の血が流れているなんて、威張って世界を支配してる気でいる一族の末裔だ。


「やあ、アドリアン・ロイル。リドムの葉っぱを持参して登場とは、お前らしいな」


「相変わらず呑気な奴だな。お前、現状が分かっているのか」


「何の事だ?」


 アドリアンは、ブリジットを指差して言った。


「この火竜の心臓を取った者に、冒険者ギルドの創設者のバーファー家が、最高金貨千枚の賞金をかけやがったぜ」


「こいつは、まだ赤ん坊だ。心臓を取り上げるのは良くない。こいつだって苦しいはずだし、何より自由が無くなるじゃないか!」


「だが、最高金貨千枚のせいで、みんな、理性がぶっ飛んだようだな。一生暮らして行ける金だ」


 マークウェルは、すぐにこの木から、逃げようとして、アドリアンに止められた。

 アドリアンは、言う。


「この木は、まだ気付かれて無いけど、アルテア中に探索の範囲網は広がってるはずだ。迂闊に動かない方が良いぞ」


「でもお前は、見つけたんだな?」


 アドリアンは、不適に笑う。


「俺は、精霊の最高位の風の奥方と契約してるからな」

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