第5話  冒険者ギルドヘ

 結局、マークウェルは、部屋の代金を弁償させられて追い出された。

 ロザリンデには、子供が出来ていたら知らせてくれと、アルテアの冒険者ギルドの連絡先を渡して、そそくさとブリジットを連れてリド・オアシスを後にした。


「くそ~!!まだ、ギルドに金を受け取りに行く前だったのに!!」


 ブリジットには、何故マークウェルが不機嫌なのか、分からない。

 不思議そうにマークウェルを見ていた。


「いいか!!これから、アルテアの冒険者ギルドに金を受け取りに行くが、絶対に喋るなよ!!」


 ブリジットは、首をかしげて声を出そうとした。

 その事を咄嗟に察したマークウェルは、


「黒板!!」


 ブリジットは、不服そうに首から下げていた小さな黒板にキコキコ書き込んでいた。


《冒険者ギルドって何?》


「魔物をやっつけてお金貰うところ」


 マークウェルは、ぶっきらぼうに答えた。


「一緒に連れてってやるからゼーッタイに喋るなよ!!喋ると捨てるぞ」


 ブリジットは、ウンウンと頷いた。


「分かってるのか?リドのオアシスと違って、人がたくさんいるんだ」


『ブリ、ワカッテル』


 突然、また火が飛んできてマークウェルは、鞄を焦がしてしまった。


「ブリでもマグロでも良いから、喋るな!ここは、お前の居た魔族の巣じゃないんだからな!人間界は、ある意味恐ろしいんだぞ!また、心臓を盗られたら、自由に移動が出来なくなるし、人形に逆戻りにされちまうんだぞ」


 ブリジットは、キコキコ書く。


《でも魔族は、ブリの事、何にもしなかったよ?》


「それは、お前がチビで役立たずだからだ。竜が人型になると麗しいのは本当らしいな。見てくれが良いから、置物にしてたんだろ?」


《良く分からない》


 マークウェルは、風の大将という精霊と契約していた。

 空を飛んで北上し、アルテアの城塞都市まで来た。


「ギルドで金を受け取って来るだけだから、ここで待ってろ。

 この前、二階まで浮いてたのは、お前風の精霊を操れるってことだよな?」


 マークウェルの問いにブリジットは頷いた。


「大将、チビをここに置いて行くぞ、見失うなよ!!」


 <任せろ!!マーク>


 言って、マークウェルは、華麗にジャンプして、地上に降り立った。城壁の門の方へ向かい歩いて行った。

 何が何でも、今日中にお金を貰わなければ、今晩泊まる宿代も無かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る