第5話

 夜、一日の終わり。

 記憶が消えてしまう前に、ペンを手にする。


「──さて」


 日記を開くのを待っていたのか、猫がきらりと目を光らせる。


「今日のお前は──人助けをした。そこで、女神のしもべと知り合った」


 おやつのことを思い出したのか、ぺろりと舌を出す。


「街の外では、魔物に襲われた。剣に救われたな」


 今度はにおいがどうと言っていた時のように、顔をしかめる。


「学者から聞いたこともある。我にたずねたいことがあるなら、こたえてやってもいい。だが──」


 視線が、白紙のページへと向けられた。


「書くことができるのは、3つだけだ。

 書いたものは、お前の知識、経験として、身につけることができる。

 書かれなかったことは、夢のように儚く消えていく」


 猫は問う。


「さあ、どうする?」


 私は──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る