浮気されたので婚約破棄します~祟られてるから助けて? しりません~

ことはゆう(元藤咲一弥)

浮気されたので婚約破棄します~祟られてるから助けて? しりません~





「ああ、水原さん、お宅のお子さん浮気してたんで婚約破棄しますね」

『ちょ、ちょっと待ってくれ!!』

 私の言葉に電話口の相手さん、婚約相手の父親は大慌て。

『と言う事は、我が家の祟りを鎮めるのは』

「やりません、不義理なお宅のお子さんを恨んでください」

 そう、元婚約者の家は祟られてしまっている。

 ちなみに、婚約者が原因で。

 その為、家全体が祟られているのを、私がずっと鎮めていたのだが、もう面倒なので辞めにする。

 好きな相手がいるから、とか言ってくれたら不義理じゃないが、浮気されたなら不義理なので助ける気は無い。

『息子にも謝らせるから、頼むから助けてくれ!!』

「いえ、謝罪は結構です。代わりに一ついい事を教えてあげましょう」

 婚約者の父親に恨みはないので教えてあげる。

「あの祟り、息子さんと縁を切れば貴方達には来ませんよ」

『ほ、本当かい?!』

「それで宜しいなら、縁切りのご用意をさせていただきますが……」

『そ、それで頼みます!!』

 非情な親かもしれないが、息子が原因で祟りに家が襲われたのだ、鎮めるのが私でも手一杯だし、余所の神社やお寺に言ったら門前払いくらうやっかいなものだ。


 あれだけ、その事説明しておいて不義理を行うなら、こっちだって非情で通す。

 私はそう決めていた。

 勿論親には言っているし、やっちまえと言われたのでやってやる。





咲良さくら?!』

 着信拒否をあえてしてなかったので、元婚約者から連絡が。

隆史たかしどうしたの?」

『な、何なんだよ!! お前俺に何をしたんだよ?!?!』

「何もしてないですよ、そう」


「アンタについてる祟りを鎮めるの辞めた位かな、したことは」


『祟りぃ?!』

「心当たりあるでしょう? 神社やお寺から門前払い喰らいまくってるし、除霊とかできる人からも拒否られてるの」

『な、何で由岐ゆきまで祟られてるんだよ!』

「そりゃアンタの結婚相手になったからでしょう? 末永くお幸せに」

『待ってくれよ! なぁ頼む助けてくれよ!』

 私は大げさに息を吐いた。

「アンタが好きな女がいるって名目で婚約解消してほしがったら私は祟りを鎮め続けてあげたけど、アンタは浮気したんだからその義理はない、じゃあね」

『まっ……』

 スマートフォンの通話をきり、着信拒否をしておく。


 その後、浮気相手からも連絡がきたけど、即座に着信拒否した。





 私はしばし独り身を満喫していたが、ある日突然兄のように慕っていた上総かずささんに遊びに誘われた。

「上総さんは恋人とかいないんですか」

「いないですよ」

 上総さんはにこりと笑った。

「咲良ちゃん、聞いたよ。隆史と婚約解消したって」

「誰から」

「君のお母さんから」

「おかーちゃんめ……」

 口が若干軽い母親を恨めしく思う。

「それでなんだけど咲良ちゃん」

「何でしょう?」

「良かったら、僕と結婚前提に付き合って欲しい」

「……え?」

「君が婚約者がいるから諦めていたんだけど、君は婚約解消になったと聞いた時我慢できなかったんだ」

「あの……本当、ですか」

「本当だよ」

「その……じゃあ、宜しくお願いします」

「本当かい?! ああ、嬉しい」

 上総さんは私を抱きしめてくるくると回ります。


 上総さんは不貞行為などせず、私と清い交際を経て結婚しました。

 そして子どもも生まれました。



 元婚約者と浮気相手は──

 浮気相手は周囲で起こる怪異に恐怖して飛び出して車にはねられ、腰からしたが動かなくなり、そのまま病院で毎日怪異に襲われて恐怖で発狂して、自殺未遂を繰り返しているらしい。

 病院は私に彼女の怪異を電話で説明したので、一人部屋にさせてるから被害は彼女だけ、可哀想とは思わない。


 元婚約者は、怪異に悩まされ、精神を患い精神病院に通院する日々。

 働くなんてできなくなった。

 そして──



 あーあ、だから言ったのに。

 祟り神の宿る木を燃やす罰当たりな行為したら、祟られるって私口酸っぱくいったのにねぇ、隆史?

 子どもだからで許されることじゃないんだよ、祟り神はとくに。

 しかも灯油もって悪意マシマシでやったらそりゃ祟られるわ。


 どんなに枯れてても大事にしなきゃいけないのに。

 あーあ。


 そこの神社の娘だから私が鎮めてたのに、馬鹿な奴。



「咲良」

「上総さん」

 夫に呼ばれ、ふと我に返る。

「また、元婚約者の事を考えてたのかい?」

「まぁ、祟られる様な事した馬鹿の事ですからね」

 上総さんはにこりと笑って言った。

「馬鹿が自滅したんですもう気にすることもないですよ」

 夫の言葉に、私は息を吐く。





 祟られた二人は、もうこの世には居ない。

 心中したからだ。


「やれやれ、慈悲くらいあげれば良かったかな?」

「そんなの必要ないでしょう? 彼らは全て──」


「自業自得」


「だったんですから」

 上総さんの言葉に、何とか納得しながらやってきた子どもを抱き上げる。

「お前は神様に悪いこととかしちゃだめよー」

「あい!」

 まだ幼い我が子だが、同じような目に遭わないように祈っている。

 神様を怒らせたら大変なことになるから。





 そして、裏切られたのを知ったときは泣きたい位悲しかったからね。






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