第五話 バットエンド風味~罪悪感を添えて~

4日目。俺は、早速サーラの部屋へと移動していく。

マーラから聞いた話では、サーラは魂を自室に保管しているらしい。その魂を取り返すことによって、俺は晴れて自由の身というわけだ。

昼が少し過ぎたほど、今の時間サーラは部屋にいない。今がチャンスの要だ…覚悟を決めサーラの部屋に入ろうとしたとき呼ぶ声が聞こえる。

「お待ちを、その部屋はサーラ様の物。いくら清掃を任せられてたとはいえ、主の部屋に許可なく入ることはあってはなりませぬ!許されざる蛮行にございまする」

レイブンだ、しかし様子がおかしい、いつもより強い語彙ごい警告けいこくをする。

さてどうしようか…こいつに見られながらでは、取り返すことができない。

『レイブン?ああ、あの鳥畜生とりちくしょう…ええよ、どかしたる』

「…!その声は…まさか、あなた!マーラと」

そう空間に声が響くと共にレイブンはその場から消えてしまった。

『ふふ…さ、かぎも空けたるさかい、入りんしゃ?』

扉を開け、中へと入る…中は窓は締め切っており薄暗い

しかしその中で、ぼんやりと光り、浮かんでいる球がいくつかあった。

『そのな、光っとんは魂なんや。さ、触れや、触れると回収できるさかい。その一番奥の光やで?』

言われたように、光の玉に触れる。触れるとスッと吸い込まれるように、俺の中へ入って消えた。なんだか不思議な気分だ、ぼんやりする。

『そう、それでええんやで。次はお仕置きに行こか』

俺は部屋を出た。道を曲がって、まっすぐ進む

『そうや、そうやで』

次はつきあたりで、少女がいた。

マーラのあざける、優し気な声が頭に染み込む。

『たっぷりと、わからせてあげな』

なんだろうか…ぼんやりとした気分だ…頭がはっきりしない。

『そない抵抗せんとき?』

何もわからない…

『あぁ…泣いてしもたな、サーラちゃんはええ子やね』

ただ、俺は何か間違ったことをしている。そんな気がしてならなかった…



…ふと気が付けば、俺は外にいた。炎天下の中、セミの鳴き声がうるさく響いている。

「俺はいったい…」

先程まで何があったんだろうか?確か、とてつもなく嫌なことを…

「確か、大雨で山に迷って…そうだ、洋館を見つけ」

そう思い、あたりを見回してみるが何もない…というよりも、よくよく見てみれば足元は舗装された道路だった。

「あれ?俺、遭難そうなんしたんじゃ…」

気を失って、いつ間にかおりていたのだろうか?

それとも、初めから遭難そうなんしていなくてただの幻覚げんかくだったのだろうか…

「いや、どちらにしろ周りは森だらけ…早く下りないと」

そう思い、道沿いを歩いていく。ド田舎なのだろう、十分ほど歩いても全く町が見えなかった。

その代わりに、小さなさびれた古いバス停を見つける。

「丁度良かった…」そう思いすずみに入ってみると先客がいた。

黒髪の和服の少女と、少女に抱き着いている、金髪の小さな女の子だった。

「あぁ…お兄さん、いらっしゃい。初めまして、やな?」

「ああ、うん。そうだな、初めまして」

「うんうん、初めましてや。ほら、サーラちゃん。挨拶しいや?」

サーラと呼ばれた金髪の少女は顔をちらりとあげて、俺の顔を見た瞬間

「ッヒ…!」

そう小さく悲鳴を上げ、黒髪の少女にしがみついてしまった。

「あぁ…お兄さん、気わるぅせんといてな?サーラちゃん、ちょっとお兄さんみたいな人に怖い目におうてしまったんや」

そう言うと黒髪の少女は金髪の少女の頭を愛おしげに撫でる。

正直初対面の女の子にここまで怖がられるって…なんだか罪悪感がわいてくる。

「その人のせいでサーラちゃん、大切なお茶会ほっぽり出してしまってな。友達から怒られてしもたねん。それでな、ペットもみーんないなくなってしまってな」

「あ…ああ、それはかわいそうに」

「せやろ?だから、うちがサーラちゃんを愛してあげるんや。どや、羨ましいやろ?」

少女はにこやかに俺に笑いかける。おかしい、美少女に微笑まれたというのに…何故だろうか、背筋が凍るように寒い。

「あ、バスが着たみたいやで、お兄さん」

そう少女が指をさすと、確かにバスが着いていた。

「あ…ああ、ありがとう…それじゃあな」

「バイバイ、お兄さん。ありがとうな」

そう言うと俺は、速足でバスの中に駆け込む。何故そうする必要があったかはわからない、だがなぜだか一刻も早く、元の町に戻らなければならない気がした。

そうでなければ、また、何か取り返しのつかないことに巻き込まれる気がして、仕方がなかった…

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メスガキ魔女をわからせたい 角出 坂本 @kazukou21015

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