第三話 夜の来訪、2日目の事故

 初日は、梟に鈴を渡された後屋敷内を走り回り、言われたように幾つかの場所の掃除を行った。

…魔女の住む館というだけあって、どの部屋も一筋縄ではいかなかった。棘の生えたバラだらけの部屋、阿保みたいに長い廊下、寒くもないのになぜか床が凍ってる地下!

 初日はくたくたになって、そのまま部屋に戻ると寝てしまった…

「誰かおらんか?」

誰かの声で、目が覚める。誰だ?梟かと思ったが、どこにも見当たらない。

「だーれもおらんのか?暇で暇でしゃーないんや、だーれもうちとしゃべってくりゃへんさかい」

一体だれが…寝ぼけた頭で、声のする方向にゆっくりと歩いていく、そこは巨大な化粧で鏡に可愛らしい和服で黒髪の少女が映っていた。

「へぇ…人間や、珍しいなサーラの屋敷やろ?」

「え…あの、君は?」

「あぁ、うちのこと知らんってことは新入りか?ふーん…ええよ、教えたる。うちはマーラって言ってな、魔女やってんねん。よろしゅうな?」

「え、あ、ああ…」

…正直、鏡の中で人がしゃべっていることに驚いたが、今更だと思い疑問を放棄した。

「…なんや、しけたツラしとんね。愛玩じゃなさそうやし…あ、もしやサーラの情夫かいな?アハ!趣味悪いなぁ、けぇど、あいつもよろしゅうやっとんやな」とケタケタ笑い始める

「マーラちゃんは、どうしてここに?」

「ん?うち、暇ねんでな、どーしても暇で暇でしゃーなーて、こーしてちょっかい出しとんねん。サーラによろしゅうな?」

そう言うと、鏡に映っていた少女は消えてしまう。一体何だったんだろうか…?


次の日の朝、割り振られたベッドで目覚める。

正直、これが夢で朝起きたら全部戻っていないかという淡い期待を抱いていたが、見事に裏切られてしまった。

「おや、お早いお目覚めで、では行くとしましょうか」

…なぜか部屋にいたレイブンに急かされ、俺は今日もまた屋敷の掃除へと向かうこととなった。出るとき、なぜか方に止まっていた、重い。


 二日目の初めは厨房に向かうこととなった、レイブンに渡された「渡りの鈴」は本当に便利だった。昨日広い屋敷を散々迷ったが、これさえあればもう迷うことはない。

 厨房に入るうとしたとき、中から勢いよく誰かが走り出してきて、ドンと俺にぶつかる。

「うわ…!?…ッ!貴様、一度ならず二度までも我の妨害をするか…!」

…サーラだった、なぜこんなところで?何故、こんなところで!?

「終わった…」

そう、こぼれてしまうのも仕方があるまい。

しかし、覚悟していた終わりは来なかった。

「あ!レイブンさま、丁度よかったっす!サーラ様がまたつまみ食いっす!捕まえてくださいっす」

厨房から飛んできた鳩が大声で話す。

「はぁ…またですか。貴君、サーラ様を捕まえてください」と肩に止まっていたレイブンはまるで仕方ないという口調で俺に命令する。

「え、いやでも…」

「大丈夫ですよ。ご安心なさい、それに早く捕まえなければ私が罰を下しますよ」

「……」ええい、どうにでもなれ!

「な…!?何をする、貴様。使い魔の癖に!」

「サーラ様…何度も言っておりましょうに、朝食の前に菓子を食べてはなりません。」

「う、うるさい!レイブン、もう我は200ぞ?いつまでも子ども扱いをするな!」

「うわ、ちょ…!?」小さな体が勢いよく暴れるものだから、俺の拘束を振りほどきそのままどこかへ走り去っていってしまった。

「…はぁ。サーラ様のお転婆はいつになっても直らない、むしろ、私達では捕まえられないことをいいことにますますお元気になられてしまった」

「め、面目ないっす…」

鳥が二匹しょんぼりしている…

「貴君も、しっかりと捕まえろと言いましたのに」

「いや、でも罰があるんだろ?」

「しかし、それよりもサーラ様の食生活が心配なのです」

…否定しなかったぞこの鳥

「いや、そもそもどうして主を捕まえようと?」

「サーラ様は俺らの主っス!だから、立派な魔女になれるよう、俺達で教育してるんっスよ!」

「え、えぇ‥?」意味が分からない…

「この辺りは貴君には関係のないことです。さあ、掃除へと移りましょう、厨房の汚れは手ごわいですよ?」

…その日俺は数時間かけ厨房の汚れを落とすことになった、まだまだ日は落ちていなかったが疲れがあったのでベッドに倒れ込んで寝てしまった。

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