第二話 屋敷を掃除するだけの命懸けのお仕事


「これより先、6日目の夜、我が主様がえある『ワルプルギスの茶会』の主催者しゅさいしゃとして選ばれました。

しかし嘆かわしいことに、その会場となる屋敷やしきは荒れ果てているのです」

ふくろうに連れられ、俺は屋敷を歩いていた…

やはり…何だろうか、汚い。天井には蜘蛛くもの巣が張り、床にはほこりがつもり、窓も曇っている。

「この屋敷は過去に人の手によって作られました。しかし、我ら使い魔は人ではない。掃除が上手く出来ず幾星霜いくせいそう、主様に掃除していただくわけにもいかず…」

「その結果、俺が掃除することになった訳か…」

「左様。ですがご安心ください、本来人間なんぞ使い魔にするものではありません。茶会が無事終われば、きっと許され、あなた様は使命を全うしたものとして開放されます」

「…しかし、万が一茶会が失敗に終われば…おぉ、考えただけでも恐ろしい」

ぶるりと梟は演技のように身を震わせる。

…なんか腹立つなぁ。小突こづいてやろうかと思っていると、梟は突然止まり。

「つきました、あなたの部屋です」

そう言うと梟は器用に扉を開け中に入っていく、俺のついて中に入る。

「これより6日間。あなたはここで生活することとなります。常識の範囲内であれば、ご自由にお使いください。」

中には日記の置かれた机、ベッド、そして大きな化粧台けしょうだい、小さなランプ…部屋は狭いがなかなか良い場所だった、汚れているという問題一点もんだいいってんを除けば。

そう考えていた俺に、雑巾と箒を投げ渡される。

…いや、どこから取り出した!?

「まずはお手並み拝見と行きましょう」

掃除をしろと…仕方ない、やってやろうじゃないか…!

―2時間後

「ふぅ…」と息をつく、部屋の掃除をあらかた終えた

「ホウ…これはこれは、見かけによらず…主様は良い拾いものをされたようです。」

梟はそう感嘆かんたんの声を上げ、笑いかけてくる。褒めているのだろうか、ちょっとうれしいが変わらず上から目線なのがむかつく。

「では、何かわからぬ点はございますか?」

「…何にもわからない。ここは何処で、お前は誰なんだ?」

「ここは、大魔女サーラ様のお屋敷、私はその召使レイブンにございます…しかし、何も知らないのですね。これは一からご説明する必要がありそうです、ああ骨が折れる」

梟の癖に肩をすくめる。正直イラっとする、動物の見た目をしていなければ殴ってしまいそうだった。

「では、栄えある仕事の内容についてご説明しましょう。あなた様の頭でもご理解できるよに」

「なんか偉そうだな…」

「おほめに預かり光栄でございます」

「褒めてない」

「1日はあなたもご存じのように、時間経過で終了します。日記セーブ機能は些細なことを記録して忘れぬようにするものです。時間は『掃除』『部屋移動』『他の使い魔との交流イベント』『ベッドで休む』などされれば経過いたします。無駄に過ごさないよう、お気を付けくださいませ」

「いや…当然じゃん!?」

「掃除は、今あなたがなされたように、部屋に入り、汚れに近づき、掃除を行えばよいのです。」

「は、はぁ……」なぜ今さら…

「しかし、此度の汚れたちは長らくの時間により頑固…中には魔力の影響えいきょうを受けこちらを襲ってくるものもありましょう。屋敷も魔力の影響えいきょう多分たぶんに受けています」

「え、汚れに殺されるかもしれないのかよ…!?」

「はい、ゆえにあなた様の仕事なのでございます。他の使い魔たちを危険にさらすわけにはゆきませんゆえ」

…掃除なんて簡単かと思ったら命がけだった。

「あなたの様の仕事はワルプルギスの茶会までに「屋敷の掃除」を行うことであります。「屋敷の掃除」の達成率により、ワルプルギスの茶会の評価が決定することでしょう」

「…」

「つまりは主様の評価はあなた次第しだいだということです。上手く事が運べば、あなたは帰ることができます。満点の評価を得られれば、正式な使い魔として召し抱えていただけるでしょう。もし、失敗でもすれば…言わずともわかるでしょう?」

「あなた私の予想以上の優秀さで、暇を持て余しているというのであれば、他の使い魔たちと交流を行ってみるのも良いでしょう。短い間ですが、共に働く仲間です。仲を深めることに越したことはございません。」

「では最後にこれを」

小さな鈴を渡される。

「これは、『渡りの鈴』という魔法道具でして、一度行った場であれば、どこへでも瞬時にわたることのできる優れものです。なにぶんこの屋敷は広すぎますゆえ、この鈴無くしては掃除は終わることはないでしょう」

…大変な仕事が始まってしまった。

雨宿りをしただけなのに、どうしてこうなっちまった…

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