第11話 ペロル、病人を連れて走る

ペロルは泣いている女性に話しかける。


「その子を渡しに預けてもらえませんか?かならず街まで連れていきます」


「でも馬もいないのにどうやって?」


「私は馬車よりも早く走ることができます。現に今日の朝デュロットの街を出発してここに到着しました。今ここを出れば明日の朝には街に着くはずです」


子供を抱えた女性は数巡悩んだ後。


「この子をよろしくお願いします」


そう言って私に子供を託してくれた。ペロルは後ろを向き、子どもを後ろに括り付けてもらう。そうして出発する前に一言だけ残す。


「私の後を絶対についてこないでください。街とこの村の中間あたりでオークが弓で攻撃してきました。おそらくオークの群れがいると思われます」


それを聞いて村長はペロルに話しかける。


「それをあなたはどうするのですか?流石に子どもを抱えて戦えるとは思えません。しかも今から日が沈みます。周りを見渡すこともできずに進むのは危険すぎます」


「俺には、夜目と言うスキルがあります。そのおかげで暗い中でも周りが見えます。オークに関しては走って逃げます。来るときもそうしました。街に着いたら討伐してもらうようにどこかに依頼を出します」


それを聞いて村長はペロルの持ってきた依頼票と銀貨を十枚手渡した。


「これは、子どもの治療代とオーク討伐の依頼代です。気を付けてください」


イケメン村長は対応もイケメンだった。ペロルはそれらを受け取ると、デュロットの街に向かって走り出した。


夜になり、夜行性の獣が動き出していた。走って一時間しか経っていないにも関わらずウルフやゴブリンに追いかけられた。全部置いてけぼりにしたが。


「規定条件を達成しました。スキルポイントを一、ステータスポイントを二獲得します」


走っているといつもの声が脳内に響いた。今は急ぎのためAGIにステータスポイントを二振る。スキルは負荷軽減を取得した。


後ろが軽くなった気がしたペロルはさらに加速していく。村から四時間進んだところでまたもや矢が飛んできた。しかも次は正面にオークの群れが何かを待ち構えている状態でだ。


矢は問題なく躱したが、目の前は多くのオーク(駄洒落じゃないぞ)にせき止められまっすぐ突き進むことはできそうにない。


ペロルは一度二十分程引き返し、オークアーチャーのいない方の森へと入りこんだ。


少し回り道になるがオートマッピングのおかげで道に迷うことなく元の道に戻ることができた。


ペロルはそのまま街まで走り続け朝方、デュロットの街東門へとたどり着いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る