アトランティスの沈没

朽木桜斎

海のどこかにある島・アトランティスは、実は少しずつ沈んでいっていて……

 大海原のあるところに、アトランティスという島があって、そこはデミウルゴスという神さまが支配しておりました。


 実はこの島は、少しずつ沈んでいっているのです。


 そのことに気がついている島民も少なからずいました。


 だからある者は大きな船を作って、仲間たちといっしょに島を出たり、またある者は自分だけが乗れる小型のボートを作って、ひそかに沈没へそなえたりもしていたのです。


 もちろん、沈没を信じない島民は彼らをバカにしたり、石を投げつけたりもしました。


 あるいは知っているのに、面倒だからだとか半分疑ったりして、ほとんど備えない者もいたのです。


 いっぽうデミウルゴスは、当然島が沈むことを知っていましたから、配下たちにこっそりと大きな潜水艦を作らせていたのです。


 そしてとうとう、島が大海に没するそのときがやってきました。


 船を用意していた者たちはもちろん助かりましたが、そうでない者たちは次々に海へと投げ捨てられました。


 そうして島が完全に海へ沈んだあと、デミウルゴスの潜水艦がひょっこりと顔を出したのです。


 だまされたと思った島民たちは、一気呵成にその潜水艦へ攻撃をはじめました。


 潜水艦は頑丈な金属で作られていましたが、道連れを欲しがってヤケになっている島民たちの怒りはすさまじく、ついには亀裂が入り、穴が開き、島へ続くように大海へと没したのです。


 こうしてアトランティスもデミウルゴスも、すっかりといなくなってしまいました。


 大海原にはところどころ、大小さまざな船たちが幾艘か、ぷかぷかと浮かんでいたのでございます。


(終わり)

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アトランティスの沈没 朽木桜斎 @Ohsai_Kuchiki

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