第6話 能力の開花


私達が声を揃えて告げると神父2人は一斉に臨戦態勢に入った。私は短剣を構え直し、リートも短剣を抜いた。私はゆっくりと息を吐き目の前の神父2人に目を向けた。


「ソアレ。さっさと害虫駆除を終わらせて帰るぞ」


「はいローアルさん。」


「害虫だなんて失礼ね……下等種が。」


「お前達こそ害虫と同じだろう?なぁ下劣な人間が。」 私達のその言葉を聞いた瞬間に彼らは私達の方へ向かってきた。私とリートは頷き自分の敵だけを見つめヒラリと躱した。赤い髪の神父は小さく「チッ……」と舌打ちをし胸元にある十字架にそっと触れ「神よ……お導き下さい」と呟いた。リートの方をちらりと見れば緑色の髪をした神父の攻撃を【ワザと】避け続け相手を挑発している。


「あの吸血鬼避けてばかりだな?まさかソアレに負けそうなのか?」


「何を見て言ってるのかしら?リートはワザと避けているの……よ!」私はそう告げ持っていたもう一本の短剣を神父の方へと思い切り投げつけた。その短剣は神父の頬を少し掠めただけで終わったが私は笑みを浮かべた。


「他の事に気を向けていると……死ぬわよ?神父さん?」


「貴様……!」


「もう一度チャンスをあげる。名を名乗りなさい。あの神父から聞いたけど私は貴方の口から聞きたいのよ」


「……ローアル。それが名前だ害虫」


「そう。なら私も名乗りましょう。フローレス家が長女アステール=フローレス。以後お見知りおきを。」


「フローレス……貴様あのフローレス家の生き残りかっ……!」


「えぇそうよ……貴方たち教会の人間共が滅ぼしたフローレス一族の生き残りよ……話はおしまい。言ったでしょう?狩り時間だと!」 私はそう告げたあと神父……ローアルへと向かって走り出した。この神父の息の根を止めればまたお父様達に報告が出来る。そう思って振りかざした短剣は神父を貫いたはずだった。

「残念だったなフローレスの生き残り。」その言葉を聞いて私は初めて攻撃が止められたことに気がついた。私は何とか相手の手から抜け出そうと腕を動かすがなかなか動かず思わず「クソっ……」と声を漏らした。神父は「今お前を神の元へ送ってやる。」と告げ、銃を構え引き金に指をかけた。こんな所で死ぬ訳にはいかない……教会を壊滅させるまで死ねないっ……リートを……家族を1人にする訳にはいかない……!そう考えていると神父は「死ね。害虫め」と告げ、引き金を引いた……はずだった。

その弾丸は空中で止まり、私には当たることは無かった。私は急いで辺りを見渡しこの状況を把握し、お父様に言われた事を思い出した。

【吸血鬼の純血種にはそれぞれ能力がある。お前の能力の開花が楽しみだ】私はその言葉を思い出し涙を零した。お父様……お母様……そして妹のユーラ……遅くなってごめんなさい。私……やっとこの能力が開花したみたいです……。そう考えたあと、動きが止まっている神父の手から何とか抜け出し私は弾丸が当たらないギリギリのところまで下がった。



「貴方が神とやらに誓いを立てるなら私はこのフローレスの血に全てを誓うわ。」そう告げてゆっくりと目を閉じもう一度目を開けば静かだった空間が一気に騒がしくなった。

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