第4話 対面


部屋へと向かっている途中廊下ですれ違う部下であろう人間にジロジロと見られ私はため息を吐いた。見られることは慣れている。それでもこの視線だけは無性に腹が立つ。


「お嬢様。目の色が変わっていますよ落ち着いてくださいませ」


「……そうねリート。こんな下劣な人間共に構ってるほど暇じゃないもの。」



「えぇ。早く話を済ませましょうお嬢様」その言葉に私は頷き目的の人物がいる部屋の前まで来た。中に入ろうとすると恐らくボディガードだろう人物が止めてきた。リートは「どういうおつもりで?」と問いかければ相手は「名を名乗ってください」と告げてきた。私はため息を吐き「フローレス家が長女アステール。そして付き人のリートよ。そこをどきなさい人間」と軽く睨みながら告げれば相手は物怖じもせず無言でドアを開けた。


「久しいなフローレスの。」


「……私には名前がありますよノクス卿。前に会ったのは5年前かしら?」



「あぁ。全く変わってないな。」


「ノクス卿。我々は雑談をしに来た訳ではありません。早急に要件を。」


「そう急かすな付き人。それとも早く狩りがしたくて堪らんか?」


「貴様っ……!」とリートがノクス卿へ飛び掛かろうとした。私はため息を吐き「リート。人間のつまらない挑発に乗るなんて……貴方そこまで幼稚だったかしら?」と問いかければリートは1歩下がり「申しわけございませんお嬢様。」と告げてきた。私は笑みを浮かべノクス卿の方を向いた。


「それで?要件は何かしら」


「最近噂になってる赤い悪魔を知ってるか?」


「……えぇ。確か神父の1人がそう呼ばれてるらしいわね。」


「あぁ。一応の警告をと思ってな。君は吸血鬼達の世界……オスクリタとここ、リュミエールを繋ぐ唯一の吸血鬼だからな」



「……ご警告感謝するわ。ごきげんよう」



「あぁ気を付けて。」その言葉を聞いたあと私は足を止め彼に振り向いた。そしてただ一言「私は別にこの世界とあっちの世界を繋ぐつもりなんてないわ。たまたま貴方とは利害が一致してるだけ。神父嫌いの教会嫌いって事だけ。勘違いしないで」そう告げて私は部屋の外へ出て周りの視線も気にせずすっかり日が落ちた外へ出た。今日は明るいくらいの満月で。私は笑み浮かべ「いい狩りの時間になりそうね」とリートに告げた。彼は頷き「えぇお嬢様。良き時間になりそうですね」と答えた。



そしてこれが私と赤い悪魔と呼ばれる神父と出会う1時間前だった。


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