一週間ゲーム

 四月二十五日


「鬼ぃ!!こんなの梓が耐えられるわけないですよぉ…!!」

「身体がぁ辛いですぅ!!」

「く、くぅ…梓がやればいいんですよね!!」




 僕とりっちゃん先生が交互にシャドーイングしながら気配察知を完璧にマスターしようとしている傍らで、いつものように、後ろの階段の方から梓の悲鳴が響き渡る。




「玲緒奈!!こうよ!!神様!!あたしに力を貸しなさい!!貸してくれたなら、そうね!!パパに頼んで好きなもの買ってあげるわ!!」

「陽のバカ…神が私達人間と契約するのは…あちらにも利があるから…だから、対等でなくちゃならない…」

「玲緒奈こそわかってないわね!!ご褒美がないと頑張れないのよ!!だって、梓は少しお金を渡せば、野菜を抜いてくれるの!!」




 少し離れた右側の方で陽ちゃん達が、毎度の如く…真面目に考えているつもりなんだろうけど、めちゃくちゃなことを申している二人のお嬢様…そしてそんなお嬢様の声を耳にしたのか、シャドーイングを止めて額に手を当てるりっちゃん先生…




 そんな彼女達の様子を眺めて思わず、心の中で平和だなと思う。




 ◆◇◆◇




 ——こんな日々が続けば…

『…主が続かせるのじゃ。それに現神の解除が近づいてきている。この意味がわからない其方ではないはずじゃ』

 ——如月健斗…か

「うむ。わかっているならいいのじゃ』




 ◆◇◆◇




 アフロディーテとのやりとりの後、僕はバテバテの梓は一旦除いた三人を集める。




「僕達が言っても…この調子だから——うん、二人とも…梓に学んでくるといいよっ!!」




「…や」

「やだ!!」




「ダメ」




「いくらあたしの穂花の頼みでもこれだけは…!!」

「陽のじゃない…。穂花は私の…」

「いえ、私の穂花です」




「はいはい。三人とも心の底から平等に愛しているので、りっちゃん先生は自主練、陽ちゃん達は僕と共に、階段を降りていく梓の元へ行こうか…?」




「ええー!!」

「穂花…それだけは…」




「じゃ、こうしよう!!一週間以内に二人が今よりも進んでいたら、僕がしてあげる。できなかったら、素直に梓に頭を下げてもらう。どう?」




「本当になんでも?」

「………穂花に二言はなし」




 陽ちゃんも玲緒奈も梓を雇ってる身だから、彼女へ頭を下げる行為に抵抗があるのも仕方ない。日本でも大きな企業の不祥事などを除いて、社長が頭を下げる事は滅多にないだろう。




 それとは別に、彼女達の心境として、『僕達に置いて行かれたくない』のもあるはずだ。だから、二人に欲望のぼくを吊り下げれば、乗ってくると推測していた。




『主も人が悪いのじゃ。勝ちが決まっておる賭博しあいをわざわざ、太陽と月に持ちかけるなんて』

 ——否定はしないけど、それでも、彼女達がにならなければ、永遠に進めないからね。

『それもそうじゃが…』



「穂花…二人が本当に成功して、あんなことやそんなこと、はたまた夜のベッドでメロメロタイムなんて…ダ、ダメに決まってるじゃないですか!!私は絶対に認めませんよ!!」




 りっちゃん先生…あの、せめて鼻血を出さないでください…。




「りっちゃん先生、大丈夫だよ。うん。なんでもしてあげる」

「………やる」

「言質取ったんだから!!」




 りっちゃん先生にトイレへ行くよう促した後、二人の返答に、にやけてしまわないように必死で取り繕いながら、僕自身も『気配察知』の修行へと励む。




 こうして『一週間ゲーム』は開始された。




 ーーーーーーーーーー


最近忙しくてごめんなさい(´;ω;`)







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