(幕間)Don't touch danger
「「「アイデン魔王様、万歳!!!」」」
「鎮まれ、余の愛しき部下達よ、時はきた!!罪のない同胞を殺し尽くした人間共を殺戮する時が来たのだ!!」
余は、玉座から赤色の絨毯の上に選別した魔族を這いつくばらせ、魔族の王視点から見下ろす夢を何度見なければいけないのだろうか…。
それとも、現実がこんなにも残酷だから…夢に焦がれるのか…。何か大事な物を忘れているようで思い出せない…。
◆◇◆◇
「こら、アイデン!!さっさと、こっちに来て掃除をしろ!!それが終わったら、草毟りもしろよ!!」
余の幸せな夢から、理不尽をぶつけられる現実へと引き戻される。
そうだ…。余は、その日を生きるためだけに、三百年前から身長が高い黒山羊に一人でいたところを拾われて…人間を売り捌く仕事をしているのだった——といっても、余はあくまで掃除や周囲の整頓がほとんどである。
「ったく…!!本当に使えねえ奴だなぁ!!いいか…!!身寄りのないお前なんぞ、俺様はいつ手放してもいいんだからな」
この台詞を耳にしたのも何度目なのだろうか…。そもそも、余の仕事スピードは別に遅くないし、この男の場合、遅ければ既に解雇しているはずだ。では、なぜ余に当たるのか——それは、
勘違いしてはいけないのは、別に人間は弱くない。特に、学院を卒業した者ならば、ほとんどが神と契約している。
ただ、余のような魔族と明確に異なるのは、元のステータスの差だ。魔族は、人間と違い…酸素濃度の薄い所で生活することに慣れ親しんでいる。これが指し示すのは…常に修行の状態のため、スタミナから何まで差がある。
他にも、黒山羊のように自身の角を武器にできたりもするのだ。余で表すならば、薄紅色の二枚の翼だ。
だが、人間もそう簡単に行かない。学習する生き物なのだ。彼らは黒山羊に狙われてると察知した瞬間——群れることを選んだ。
故に、成果が芳しくないから余に八つ当たりをする。
「…わかった」
その後、言われた通りに仕事をこなした後、ため息を吐きながら、いつものぼろぼろの小屋で眠るつもりだった——
「アイデェェン…ったくよぉ…お前は容姿がいいんだ。それにな?俺様は、人間の雌が取れなくて困っていたんだ。そもそも、こうやって生活させてやった恩があるんだ。お前は、俺様を満足させるべきだよなぁ?」
このクソ黒山羊は何を言っているんだ? 余はお前の言われた通り仕事をした対価として、生活しているのだ。
「…断る」
「はぁ!?テメェなんて、ただの身寄りのない魔神様とも契約していない童だろうが!!その分際で偉そうにしてんじゃねぇ!!」
黒山羊は余へ馬乗りになり、必死で抵抗する余を追い詰めていく。
なぜ、余はこんなにも無力なんだ…!!
こんな奴に犯されるくらいならば…!!
そもそも、身寄りもなければ記憶もない…!!
未練も何もないじゃないか…!!
なのに、なぜ、舌を噛んだのに死ねない…!!
——チカラガホシイカ?
チカラ…?余がそんなものを手に入れたって…
黒山羊のゴツゴツとした手が余の胸へと這い上がっていく。
気持ち悪くて、全身が震えてしまう。
——チカラガホシイカ?
その汚い手で触るな
——チカラガホシイカ?
その汚い顔を近づけるな
——チカラガホシイカ?
その穢らわしい物を出すな
——チカラガホシイカ?
この不届き者を殺す力が欲しいっ!!
——ワレノナハルシファー、ヨベ
ルシファー!!余に力を…!!
◆◇◆◇
「何も持たない余を今日まで育ててくれたことに賛辞を送ると共に、余に働いた侮辱の罪としてせめて安らかに眠るがよい」
「は…?犯す前に狂い出したのか?まっ、それはそれで俺様は寛容だから構わねえがな!!」
「『ローズワンズサイト』」
「見えない…!!なぜ、俺様の視界が…!?まさか、アイデン!?」
うるさい…
「この暗闇を早く解け」
黙れ
「恩を忘れたのかァァァァァァァ!?」
散れ
今までの鬱憤を晴らすが如く、黒山羊へ拳を繰り出していく。
途中まで薄汚い声が聞こえていたが…それも、今では静まりかえる。
久しく忘れていた戦闘の高揚
余はなぜ、長い時間…この快感を失っていたのだ…?
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間章です。本編にいずれ繋がります。アイデン魔王は穂花の敵になるか味方になるか——
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