お泊り会1

「お、お母さん…!!あの、今日ね…よーちゃんと玲緒奈と田所さんが泊まりに来るんだけど…えっと…」




『主は本当に母に弱いのじゃ…』

 ——う、うるさい!!




「お泊まりねぇ…。名門:月夜流の御息女に、花山家の御令嬢、そして、近所の田所さんの娘…ね。田所さんの娘は構わないんだけど、お嬢様二人が…困るわね」

「二人とも僕のこいび…ゴホンッ!!親友だから、そんな家格なんて気にしないと思うよ」

「なるほどねぇ…。いいわ…。準備しましょう。多分、彼女達だけが来るとは




 お母さんが一瞬だけ、目を細めたかと思いきや…その後、すぐに僕へ、まるで太陽に向かって向日葵が咲いた時のような笑顔を向けながら、僕の頭を撫でる。




 ◆◇◆◇



 お母さんが窓拭きをやめて、玄関の掃除を始め出したのを見て、僕自身も自室を整理整頓する。



 元々、睡眠以外で使う機会が少なかった事もあり、特に掃除する所はないのだけど…念の為である。




 視界に映る限り…整理整頓する必要がなかったので…足を床につけて…ベッドの下を覗く。



 すると、複数の開封されたスナック袋が散らばっていたので、それを集めてゴミ袋へ入れている途中に僕は気づいてしまった。




 きっと、このスナック袋のゴミ達は僕が転生する前の穂花の仕業だなって…………だとしたら、僕が転生した事により、本来のはどうなってしまったのか…。



 

 如月健斗も同様だ。なぜ、僕はこんなに気づく事ができなかったのか…。




『妾には主が何を考えてあるのか分からぬのじゃが…時間に余裕があるのじゃろうな?』




 アフロディーテの言う通り…今は手と足を動かさなければならない…。同時に、この疑問は…必ず突き詰める必要があると僕は確信した。




 ——今だけは、なかなか収まってくれない胸騒ぎをポケットにしまい、頭を切り替えなきゃ…!!






 ◆◇◆◇



 ピンポーン



 僕が、整理整頓を終えたのと同時に、玄関の方向からインターホンの音が鳴り響く。



 その音を耳にした瞬間——僕は、慌てて自室の扉を開けて、階段を駆け下り、玄関の方へと向かった。



 そんな僕を見守るかのように、淡い赤色のロングエプロンを身に纏ったお母さんが僕よりも少し後ろに立つ。




 扉を開けてみると—— 学院の時の丸い眼鏡を掛けて…髪はストレートヘアーだった容姿とは、全く異なる田所さんがいた。



 僕の視界に映る彼女は、淡い肌色ベージュの髪を肩までかかるウルフヘアーにし、薄い黄色イエローのカーディガンに純白のインナー、烏の羽のような色をしたスカートで、おしゃれをしている。




 普段とのギャップに目を奪われそうになる反面、学院の時と同様…仮面を被ったような笑顔を浮かべていた事を見逃さない。




 ——それにしても…もしかすれば、彼女と彼女の家族には、無理させてしまったのかもしれない。



 僕の設定した通りならば、田所家の財は、『女堕めすおち』の中でも下から数える方が近いはずだ。




「いらっしゃい!!今の田所さん、すっごくかわいいね!!そんな田所さんがに比べて…茶色の熊さんパーカーを着てる僕が恥ずかしくなるよ!!」




 ——お母さんのお手製『熊さんパーカー』…。とても恥ずかしくて、今まで言えなかったが…理由は不明であるものの…僕の部屋着は、外へ出かける時と寝る時以外は、動物をモチーフにしたパーカーなんだよ…ね。


 




 その理由は単純で…寝る時は、フードが邪魔だからネグリジェの着用が認められていて、外へ出かける時は、人目が付くからだと思う……。

 同時に、友達や恋人が来る時、僕は毎度——こんな辱めを受けなければならないと想像すると…自分の家へ呼びたくなくなりそうだ…!!





「よ、黄泉さんの方が似合っていま…す!!森の中にいたら、捕まえて保護したくなる程です!!梓の家は貧乏だから、満足の食事を提供できるかわかんないですがっ!!」

「梓ちゃん、わかってるわぁ〜!!」

 ——田所さんは、普段使わない敬語を使っているあたり、かなり緊張しているみたいだ…。一方でお母さんはお手製のパーカーを褒められて上機嫌っぽい…。




 そういえば、田所さんとよーちゃんって似ていて…実はすごく異なる気がするのは僕の気のせいだろうか…?




『主よ…少しは、女心がわかるようににってきおったのじゃ!!なら、少しは妾のことも……ゴホンッ!!其方の言う通り、気のせいではないのじゃ!!』

 ——途中の小声が聞こえなかったけど、助かったよ!!とりあえず、教えてく…

『ふんっ!!妾は主の青狸になるつもりはないのじゃ…!!精々、頑張るのじゃ』

 ——あれ?相棒アフロディーテが情緒不安定…?





「梓ちゃん、本当に大きくなったわね!!とりあえず、いつまでも、玄関で話すのは変だから、穂花の部屋でゆっくり話してくるといいわ」




 お母さんのその言葉を皮切りに、僕は梓の手を引いて階段を駆け上がり、自室へと招いた。





 ◆◇◆◇




 僕の部屋は、一般的な子供部屋からすれば二倍ほどあり、小さな机とベッドを置いてる現状でも空きがある。




 いつもと違い緊張して、表情筋が硬直している田所さんを机の方へと触らせて、階段を降りて、ミルクとお母さんが僕達のために、作ってくれていたであろうチョコチップを挟んでいるクッキーを用意する。




「田所さん、自由に食べていいからね〜」

「は、はい!!よ、黄泉さん、これはご丁寧にあ、ありがとうございます」



 田所さんに食べてもいいと伝えたのに、口から銀色に光る雫を垂らしながら、伸びそうになる手を抑える彼女の様子を見て、思わず…大きな声で笑ってしまう。

 そんな僕の様子を見て、田所さんの緊張も解れたのかもしれない。彼女も僕に釣られて笑い出した。




 ——初めて、梓が心の底から僕へ笑顔を見せてくれた気がした。




「今更だけど、田所さんのことを梓って呼んでもいいかな?それと僕のことは穂花って呼んで欲しいんだ」

「うん!!ほ、穂花…?」

「ん、なーに、梓」




 梓が恐る恐る僕の名前を呼ぶ。なんとなく分かっていたけど…彼女は




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