第3夜 軽井沢高原ビール

見よ、この神々しき地ビールを。

親友が土産にと言って渡してくれた、軽井沢産だ。コレ甘いのねぇ、舌が踊るわ。



今宵の私は、どうしてもアレを頬張りたい。もう食えんと言うまで腹に詰め込みたい。


そうアレよ、アレ。豚の角煮よンハッ♪。

ぜひコレをこのビールの友に……!


よし、一から作って進ぜよう、ビールよ(初めて作るぞな)。グーグル先生やクックパッド師匠で調べれば、角煮なんぞフライパン一つでできる簡単お手軽レシピがいくらでも転がっている。本格的な角煮をとは思わぬ、この外道ていたらくに見合う出来栄えで良いのだ。



キッチンの隅っこに缶ビールを数本添えて。

一口大に引きちぎって焦げ目をつけた豚バラのかたまりと、白ネギ六等分のうち三本を小鍋に敷き詰め、そこに特製甘辛ソースをかけて溺れさせる。あ、ついでに茹で卵も漬けるか。

あとはゆっくりじっくり煮込むのみ。



あれま、煮汁の香りだけでビールが進んじまう。さぁおいで、二本目よ。ためらうことはない。



そうこうしているうちに、だんだん角煮が角煮らしく育ってきた。

香ばしい顔色になったじゃないか、ちょいと汁の味見を。


「あらなんか、薄い……?」


生姜、ニンニク、醤油、みりん等。食を選ばぬ王道の組み合わせ調味料で煮込む濃厚風味のつもりだったのだが、豚バラが吐き出した強烈な脂肪酸には味が負けてしまったと見えるフン(知らんけど)。


では、ここぞという時に役立つ助っ人を、冷蔵庫からお呼びしよう。ソース界屈指の大将軍、ウスターである。

これで、すべてが成った。



プルンッと肉厚な角煮と目が合い、欲情を起こしてビールもう一本。

皿に盛り付けたら酒肴作り完了、しかしてシンクのリセットも忘れずに。どうせ酔い倒れて明日まで引きずるのだから、面倒な片付けは今この場で終わらせておくものぞ。

さて次こそ、出来上がった角煮とビールを味わう極楽の時間といこうじゃないか。



いらっしゃい。

酒の力を借りよう、何でもできる。だが、中毒にならぬように。

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