第12話:人形遣いって、自分も人形でいいですよね?
「サーリヤさん、体調はどうですか?」
「あっ、院長先生…」
「大丈夫よ、そのまま横になってなさい。」
「はい、ありがとうございます。」
私は、まだ赤ん坊の時に孤児院の前に捨てられていたらしい…院長先生が早くに見つけて下さったおかげで助かったものの、かなり体調を悪くしていたのだとか…
それが悪かったのか、生まれつきなのか、幼い頃から身体が弱くて伏せってばかりだった…院長先生にも迷惑ばかりかけて役に立たない子だったと思う…
私が5歳になった頃、私のところにお客さんがやってきた。私の所にって…孤児の私の所になんか来る人なんていないはずなのに…町に買い物だってまともに行けない位だもの…
「サーリヤさん、あなたに会いたいという方がいらっしゃっているの。どうしますか?」
「私に…ですか?」
「ええ、あなたにご用があるそうです。」
そんなときにお義父様が私を引き取ってくれたの。私には才能があるんだって…
私は人形使いというレアなスキルを持っていたらしいの。レアと言っても勇者や聖女のように激レアではなくて普通よりちょっと少ないかなってくらい…
「サーリア、お前には才能がある。私の技術を全て教えてやるから、私の後を継いで欲しい。」
「私に出来るでしょうか…それと、私の名前はサーリヤです。何度も言わせないでください。」
「ん、悪かったなサーリア。」
ああ、ダメですね…お義父様に何度言っても直りそうにありません…私はお義父様のサーリアでいることにしましょう…
お義父様に引き取ってもらってからも体調がよくなることはなくて、どちらかというと悪化するばかり…最後の方はずっと車椅子でも生活になってた…
それでもお義父様は私に色々なことを教えてくれて、私の介護に人形を2人も付けてくれたの。
「お義父様、ごめんなさい…私、お義父様の後を継げないかもしれない…」
「そんなことを言うもんじゃない。きっと良くなるだろうし、その子達がお前の手足になってくれる。」
「う、うん…」
私の手が動かなくなるのが先か、今作っている私の最初で最後のお人形が出来上がるのが先か…競争ですね…
「サーリア完成したみたいだな。」
「はい、ありがとうございます。お義父様が下さった材料のおかげです。」
「材料なんて些細なことだ、何度も言うようだが、人形師にとって大切なのはセンスだ。お前のセンスは私なんかよりずっと素晴らしい。」
「はい、覚えておきますね。」
私が作った最初のドール…そして私が手がけることが出来る最後のドール…
お義父様のおかげで最高のドールを作ることが出来た…私を孤児院から連れ出してくれて、人形作りのノウハウを仕込んでくれた。
おかげで私は1人で人形を作ることが出来るまでに成長できたの。でも、私が手がけることが出来たのはたったの1体…
でも、最高の一体が出来たわ。お義父様本当にありがとう…
「ところでサーリア名前はもう決めたのか?」
「はい、私の名前からサーリアと名付けることにしました。」
「同じじゃないか…おかしな事を言う子だ。」
お義父様が人形作りに必要な素材を探しに行くらしい。私が外に出ることが出来ないから、代わりに素材を集めに行ってくれるのだそうだ…私はそんなに高価な素材じゃなくてもいいのに…それに、もう直接人形を作ることも叶わないのに…
「サーリア私が出かけてしまっても本当に大丈夫かい?」
「ええ、サーリアもいるし、お義父様の残してくれた人形も何体かいるわ。」
「そうか…素材集めの旅だ、何年か戻れないと思うが店を頼んだぞ。」
「うん、任せて。」
「それじゃあ、行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
「くすっ…お義父様、最後まで私の名前間違えて呼んでたわね…サーリヤだってちゃんと言ってるのに…」
『マスター、それで私にサーリアという名前を下さったのですか?』
「ええ、いつもお義父様が呼んでくれていた名前よ。いい名前でしょ?」
『はい、とてもいい名前だと思います。』
「サーリア、あなたは私が寝ている間私が言った仕事をして欲しいの。そして私が起きているときはその身体を貸してね。」
「はい。マスターはそのように私を作られたのですから、思うようにお使い下さい。」
そう、いつもお店に出ている私はサーリアで、私は奥の自室からサーリアを操っているの。
これも人形遣いのスキルの1つ。本当はこっちの方が一般的。
私やお義父様の使うのは本当にレアなスキルで人形を自立させるの。
私はサーリアを使って人形を作ることが出来る。サーリアは私の身体の一部なの…
ねぇ、人材派遣って、人形を貸してもいいですよね?
人形の館 ~人材派遣って人形を貸してもいいですよね?~ 睦月薫 @KaoruMutuki
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