第5話:ミートソースがないようですが、マヨネーズでもいいですよね?

 「ふぁ~…今日はお客さんも来ませんし暇ですね…」

 『かぁさま、暇ならば私にお茶を入れてください。』

 「あなたがお茶を入れてくれるのではなくですか?それと、マスターと呼びなさいと言っているでしょ。」

 『でも、かぁさまはかぁさまですよ?』

 「今日は暇ですし、ミリーの再教育でもしましょうか…」

 『マスターお茶を入れてきます…』

 逃げましたか…本当にミリーは人間っぽいですね…


 ミリーの入れてくれるお茶は美味しいですね…この子無駄に性能がいいのですよね…うちにいる人形の中じゃダントツですよ。性格がこんなんなので貸し出しできませんが…スキルが26個も入るんですよ…メイドスキルも入れてみましたし、戦闘用のスキルも入れました。どこに出しても十二分に高スペックなのですよ…ただこの子のスキルがなかなか抜けないのですよね…そして私の失敗の1つですが…この子には礼儀作法のスキルが入っていないのです…



 今日は他の子のメンテナンスをしましょう。まだ、未完成のままおいてある子もいます。

 色々な材料を元に人形の骨格を作り、最後の肉付けをスキルで行うのです。人形の骨格は男性用も女性用もそれほどかわりは無いのです。最後にスキルで調整を行う時に大きさなども変わってゆくので…


 最後の調整というのが私達人形師の腕の見せ所でもあるのです。自分の思う人形になるかどうかはここで決まります。スキルの数とかもそうです。


 私の体調なんかも人形の性能に反映されてしまうので体調管理は何よりも大切なんです。

 まぁ、体調管理はどの職業でも同じように大切ですけどね…



 「この子の最後の仕上げがまだでしたね…」

 骨組みだけ終わって、人形用のハンガーにかかっています。ハンガーと行っても脇の下を支えてるだけですよ…間違っても首の所でつっているわけではないです…


 「さて、どんな娘に仕上げましょうか…」

 スキルを使う為に魔力を練り上げていきます…この魔力がこの子達の身体になるのです。血となり肉となりといった感じでしょうか…

 「最近、メイドが人気でしたね…使い方は色々でしたが…」

 可愛いメイドにしましょう…最初からメイドとして、メイドになるべくして生み出してあげます。

 「少し身長低めで、とにかく愛くるしい子がいいですね…誰からも愛されるような子がいいです…」


 スキルを発動します…私の魔力が骨組みにまとわりついてゆき、身体を形作ってゆきます。身長も変わってゆきますね…順調のようです。

 魔力が落ち着くまで数時間かかりますから、この間に軽く食事でもとってしまいましょう。

 

「ミリー、お店を言ったん閉めていいからお昼ご飯を作って貰えるかしら?」

 『わかりました。かぁさまは何が食べたいですか?』

 「ミリー…マスターと呼びなさい。」

 『かぁさまは…えっと、マスターは何を食べたいですか?』

 何か察したようですね…私が本気で再教育を考えているのが分かるのでしょうか…ある意味すごい娘ですね…

 「そうね…パスタがいいわ。ミートソースでお願い。」

 『マスター、ミートソースが切れてます…』

 「そ、そう…なにならできる?」

 『マヨネーズであえるのはどうですか?』

 私はマヨラーではないのですよ…

 「何か他のでお願い…」

 『しかたないですね…かぁさまにならペペロンチーノでも作るのですが…』

 この娘、私をかぁさまと呼ぶ為に交渉する気ですか…それはダメですね…

 「マヨネーズでいいですよ…」

 『ちっ…』

 ミリー、今舌打ちしましたね…本当に出来がいいというか、悪いというか…


 結局、ペペロンチーノを作ってくれるところがいい所でしょうか…たまにならかぁさまと呼ばせてあげてもいい気になりますよ…

 まさか、これが狙いとかはないですよね…



 そろそろ魔力も落ち着いて、形が出来上がっているでしょうから工房の方に行ってみましょう。

 うん…できてますね…この子も素晴らしく性能が良さそうな気がします…なぜって?ミリーによく似てるんですよ…顔立ちではなく雰囲気でしょうか…この子はお蔵入りでしょうか…

 仕方ないですよ…ミリーが2人とかありえません…ステレオでかぁさまとか呼ばれたくないですから…



 一応、性能面のチェックだけはしておきましょう…

 ミリーほどではないですが、スキルスロットが16個は凄いですね…しかもメイドスキルは標準装備ですか…このままお蔵入りにさせるのはもったいない気がしますが…


 ミリーに雰囲気が似ているだけと割り切りましょうか…礼儀作法のスキルを入れるのを忘れないようにしましょう。


 しばらくは、礼儀作法を入れてテスト運用ですね…ちゃんと動くようであればもっと他のスキルも入れてあげましょう…

 そうですね…名前はエイラにしておきましょう。

 しばらくの間は、掃除、洗濯、ご飯の用意なんかをして貰う事になりそうです。ミリーとの接触は極力控えさせます。



今回の収入は無し


 人形師はそこそこ人数がいます。町に数人はいるようですが、一流と言われる者はごくわずかです。

 高価な素材を使えばいい人形が出来るわけではないようです。一流の人形師は藁からでも人形を作れるようです…

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