第4話:免疫がないようですが、抱きついてもいいですよね?

 「ここが、蝋人形の…いや、人形の館か…」

 『いらっしゃいませ、当店に何か御用ですか?』

 「こちらで人形を貸してくれると聞いてきたのだが、見せてもらうわけにはいかないだろうか?」

 『はい、構いませんよ。どうぞごゆっくりご覧ください。』

 「ごゆっくり…って、人形なんてどこにも置いてないではないか…」

 『目の前にいるじゃないですか、とびきり可愛い人形が。』

 「………・」

 『何黙ってるんですか、何か言ったらどうですか?』

 「人形…お前がか?」

 『お前とは、ご挨拶ですね…もう少し言い方はないのですか?』

 「あ、いや、すまん…あまりに驚いてだな…」

 「ミリー、お客さんなの?」

 『はい、かぁさま。私のことを可愛いと言ってくれない、どうでもいい客が来てます。』

 ミリーあなたって子は…再教育が必要ですか?

 「ミリー…再教育した方がいいかしら?」

 『ま、マスター、お客さまがいらしてます。』

 本当に…人間臭いところがあって、最高の人形ですけど…ちょっと問題もある子です…



 「いらっしゃいませ。当店の店主でサーリアと申します。ミリーがご迷惑をおかけしたみたいで申し訳ありません。」

 「あ、いや…それはいいのだが。他にも人形がいるのなら、見せてはもらえないだろうか…」

 「失礼ですが、ご用途はなんでしょうか?それによってご紹介する娘が違って参りますので。」

 「うむ…実はだな…」


 はぁ…要約するとこうですか…そろそろ結婚するよう言われているのだけど、人付き合いが苦手で、女性と話すなんて間が持たないと…それで、しばらく人形と暮らして耐性をつけたいということですか…あんまり貸したくない人ですね…でも、必要としてくれるならいいでしょう。


 「そうすると、メイドのような娘がいいでしょうか?」

 「そうだな、特にどんな人形が…というのはないのだが家事ができるのはありがたい。」

 「ちょっと呼んでくるので、待っててくださいね。」

 ステラの評判が良く今も貸出中なのですよ…名前からくる隠しスキルのようなものがついてるのでしょうか…やたらと料理が上手いと聞いてます。

 「メアリ、ジェーン。用意してください。」

 『『はい、マスター』』



 「この2名が今うちにいるメイドの人形になります。」

 「…そ、そうか…」

 顔を赤らめてますが、人付き合いじゃなくて女性に免疫がないだけでは…

 ちょっと揶揄ってみましょうか…お客を揶揄うというのはどうかと思いますが、少し試すのはいいと思うんです。

 「もっと、綺麗な子もいますが、見せた方がいいですか?」

 「い、いや…もう、十分だ…」

 やっぱり女性に免疫がないだけのような気がします。

 「どうされますか?お試しで借りて行かれますか?」

 「その子たちだと、1日いくらになるのだ?」

 「そうですね。この子達だと、1日金貨1枚になりますね。長期貸出であれば多少の割引もありますよ。」

 「そうか…ではとりあえず3日借りたいのだがいいだろうか?」

 「ええ、構いませんよ。どちらの子にしますか?」

 「そちらのロングヘアの子にしたいと思うのだが…」

 ほぉ…ロングヘアの娘がお好みですか…

 「ジェーンですね。この娘たちは女性型の人形ですが、そう言った機能はないのでご了承くださいね。」

 「そう言った機能?…」

 気がついたみたいですね…耳まで真っ赤になってますよ…

 「そう言ったことはそういうお店に行ってくださいね。」

 「わ、わかった…大丈夫だ…」



 「あと、もし延長されることになりましたら、早めにご連絡をお願いします。」

 「う、うむ。わかった…」


 「ジェーン、ちょっとこっちに来なさい。」

 『はい、マスター』

 こっそり内緒話をしましょう。どうやら女性に免疫がないようなので、スキンシップを多めに取ってもらうようにしましょう。

 過激なことはする必要はありませんが、ちょっと手を握るであるとか、そんなことで構わないのです。

 「わかりましたか?お願いしますよ。」

 『はい、マスター。善処いたします。』

 「それじゃあ行ってらっしゃい。」



 お店を出る時に腕を組みましたね…いいですよ、私の言ったことがちゃんと伝わっているようですね。

 そこで手を振り払ったりしたらダメでしょ…そこはグッと肩を抱き寄せてですね…

 コホン…2人とも頑張ってくださいね。



今回の収入

メイドドール…金貨1枚

 貸し出し 1体 3日


合計 金貨3枚

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