第18話 楽しい日々

 魔法を使うのに必要なのは、使える属性の才能と、魔法を上手く使える才能と、潜在魔力の量だ。


 僕の前に置かれたコップに水が溜まっていて、僕の両手が包んでいて、中に小さな光が灯っている。


 これは潜在魔力の量を測る方法だそうだ。


「まさか魔力量がこれほど少ない・・・人がいるとは…………」


 セバスお爺さんが珍しく溜息を吐いているけど、これには理由がある。


 アクア様から肥沃な土地を広げてくれるという話だったから、ジアリス町の壁を作ろうとした時、あまりにも僕が疲れるのが早いから魔力量を測ってみましょうと言われてここに至る。


「セバスお爺さん。僕の魔力量って少ないんですか?」


「は、はい。これは類を見ない程に魔力量が少ないでしょう。もしかしたら全人類の中でもっとも少なくて珍しいパターンかも知れません」


 ほえ~珍しいって事は凄いって事でいいのかな?


「元々キャンバル様は魔法の才能はありませんでした。後発で才能を開花させたのはいいけれど、全属性という逸材の才能のために魔力量が少ないというデメリットがあるんじゃないでしょうか。あくまで予想でしかありませんが…………」


「えっと~魔力がないと魔法が沢山使えないんですよね?」


「そうでございます」


「魔力はどうやって増やせられるんですか?」


「…………現状、魔力の増やし方は分かりません。ですが魔力が増えたという事例はよくあるのです。魔法ギルドが総力をあげて魔力を増やす方法を研究しているのですが、未だ見つからないそうです」


 魔法ギルド? 初めて聞くけど、凄く楽しそうな名前だね~。


「時間がかかっても毎日コツコツやれば作れますから、壁作り頑張ります~!」


「…………手伝う事ができず、申し訳ございません」


「僕、凄く楽しいですよ! だから謝らないでくださいね~!」


 セバスお爺さんが「はい」と笑顔で答えてくれた。




 測定も終わったので、ジェラルドさんと朝のジョギングを堪能する。


「キャンバル様。壁作りはいかがですか?」


「楽しいですよ~」


「魔法使いは魔力を使い果たすと疲れると聞いているのですが、そんな感覚はありませんか?」


「はい! 全くないです!」


 セバスお爺さんが不思議がっていたけど、魔法使いは持っている魔力を使い果たすと気絶したりするみたい。


 なのに、僕には全くそういう事はなく、魔法が使えなくなるくらい魔力を使い果たしてもぴんぴんしている。


「では壁作りが終わったら、ジョギングではなくて走り込みをしてみませんか?」


「走り込み?」


「ええ。それと興味がありそうでした剣術もいかがですか?」


「わ~い! やってみたいです!」


 ジェラルドさんがシュッシュッと剣を振り回すのを凄くかっこいいと思っていた。


 教えて貰えるならぜひ学びたいと思う。


 この日からジョギングが終わると朝食を食べてから壁作りに向かって帰って来てすぐにジェラルドさんとの修行が始まった。


 最初は木剣を上下に振り下ろすだけだったけど、身体を動かす事が楽しくて夢中になって繰り返した。


 時には手の中や指にも豆が出来て硬い部分もでてきたけど、ジェラルドさんは練習の成果の一つだから喜んでいいと言ってくれた。




 ◇




 そんな日々を繰り返して、二十日が経過した。


 そして、


「完成した~!」


 町に僕の声が鳴り響く。


 遂に町を覆う壁が完成したのだ。


「キャンバル様! おめでとうございます! そして、ありがとうございます!」


 最後の壁を魔法を作ると、後方から割れんばかりの拍手と共に、セレナちゃんが嬉しそうな笑みを浮かべて感謝を伝えてくれた。


「それにしても…………キャンバル様、痩せられましたね」


 彼女が言う通り、毎日健康的な食事をして毎朝ジョギングと魔法を終えたら、修行を続けているとどんどん痩せてきた。


 痩せたというよりは、身体が引き締まったというみたい。


 キャンバルさんは暴飲暴食を繰り返し、太った腹は自分の足が見えないくらいだったけど、今の僕はその面影すらない。


 最近は走り込みも全然疲れないし、早く走ろうと思えば町を一瞬で駆け抜けるくらいにはなっている。


「キャンバル様。壁作りお疲れ様でした。数か月はかかると思ったのですが、まさか一か月もかからず終わるとは……キャンバル様の努力にこの爺は感動が止まりません…………」


「あはは、じい~大袈裟だよ~壁作りも終わったし、アクア様も待っているだろうから、約束を叶えてもらいにいこうよ~」


「そうございますね。町民のみんなも楽しみにしております」


 爺の言う通り、町民全員が集まって、壁の完成を喜んでくれて、これからのアクア様との約束をとても楽しみにしていた。


 その足でみんなで一緒に噴水に向かった。

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